第107回全国高校野球選手権大会第6日の11日、阪神甲子園球場で行われ、2年ぶり20回目出場の日大山形は1回戦で3年ぶり31回目出場の県岐阜商に3―6で敗れた。あと1勝としていた県勢の春夏通算40勝目とはならなかったが、九回に2点を返すなど最後まで粘り強く戦った選手らにスタンドから大きな拍手が送られた。【井手一樹、中田博維】
一回に敵失と遠藤聖也(2年)の内野安打で好機をつくり、遊ゴロの間に1点を先制した。その裏は、山形大会全5試合で先発した小林永和(とわ)(3年)がこの日もマウンドへ。父勝智さん(45)は「緊張もあると思うが、試合をつくる、普段通りの投球をしてほしい」と期待した。
その直後、ビッグプレーが飛び出した。相手の先頭打者が放った打球を、中堅手の小川大智(3年)が左方向に一直線に走ってダイビングキャッチ。母裕美さん(50)は「よくやった!」。応援団や保護者ら約350人が駆けつけたアルプススタンドが沸いた。
五回裏に逆転されたが、応援団長の小鷹祐貴さん(3年)は「山形大会の準決勝でも逆転勝ちした。その再現をしてほしい」と声援を送り続けた。
5点を追う九回1死一塁から代打攻勢を仕掛けた。1人目の清野然心(3年)が四球を選び、2死二、三塁の好機で3人目の土田健琉(2年)が中前に2点適時打を放った。
試合中盤には降雨による51分間の中断があった。調整が難しい状況下でも荒木準也監督は「雨や風を言い訳にしないと試合前から話してきた」と敗因とはしなかった。岩下瑛斗主将(3年)は「来年は甲子園で借りを返してほしい」と新チームに思いを託した。
日大山形・荒木凖也監督 1回に得点できたものの追加点を奪えず流れをつかめなかった。甲子園でプレーできる喜びを感じ最後はチームとしてまとまった。今日は勝てなかったが、次は勝てる準備をして臨みたい。
日大山形・岩下瑛斗主将
相手投手が良くて追加点を取れなかった。甲子園という緊張もあって、自分たちの野球ができなかった。監督さんに勝利を届けられなかったが、信じてここまでやってこられた。感謝したい。
継投の2人「これからも切磋琢磨」
地方大会で8本塁打をマークした強力打線相手に5回2失点。「自分のピッチングはできた。甲子園で(高校野球を)終われたことはとても幸せ」とすっきりした表情で話した。
相手の試合映像を見て直球に強い印象を抱いた。捕手の阿部永成(3年)と話し、チェンジアップ、シンカーなど五つの変化球を駆使。四回までは「切れとコントロールで勝負できた」と1本の安打も許さなかった。
同級生の投手、本田聖の存在があったから、成長できた。互いに「ライバルであり、最高の仲間」と評する。昨春から常に背番号1を争ってきた。今夏は入学後初めて小林が1をつけた。山形大会から2人の継投で勝ち進み、「聖がいるから、序盤から全力で投げられる」と感謝する。
大学でも野球を続けるが、本田とは別の進路を選ぶつもりだ。「これからも切磋琢磨(せっさたくま)していきたい」。離れても、互いに意識し合う関係は続く。
アルプス最上段で応援団旗はためく
アルプス席最上段では、山形県内で最も大きいとされる日大山形の応援団旗がはためいた。時折吹く強風にも負けず掲げていたのは松尾仁近(にちか)さん(2年)。兄も同校応援団で旗手を務めており、声を出すことが好きだからと応援団へ。「旗の重さは10キロあるかどうか。風が強いと大変」と言いながら、「相手は岐阜大会を打撃で勝ち上がってきたが、守りをしっかりすれば勝てる」と野球経験者らしく分析。雨で中断後の六回裏以降は、ぬれた旗を畳んで下段に降り「頑張れ」と声で盛り上げていた。
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