トランペットの高らかな音が車内に響き渡り、応援のタオルが揺れる――。第107回全国高校野球選手権大会(日本高野連など主催)で11日、東海大熊本星翔が4回目の出場で待望の初勝利を挙げた。応援団は九州北部地方を襲った大雨の影響で、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)にたどり着けない事態となったが、車内でも必死の声援を送り続けて選手を後押し。全国最多41回目の出場を誇る北海(南北海道)に打ち勝った。
東海大熊本星翔の応援団は10日夜、バス6台に1、2年生の野球部員やマネジャー、吹奏楽部やチアリーダーら計138人が分乗し熊本を出発した。しかし、大雨の影響で高速道は通行止めとなり、バスは進むことができない。翌朝まで関門海峡を渡ることができず、甲子園には試合開始時間にたどり着けなくなった。
午前11時22分のプレーボール。三塁側の東海大熊本星翔のアルプススタンドには到着できなかった応援団の分の空席ができた。それでも、既に現地入りしていた保護者やチームに同行していた部員らに加え、系列校・東海大大阪仰星(大阪府枚方市)の応援団が「友情応援」で参加し、人数不足を感じさせなかった。
その時、中国地方を走るバスの車内では、東海大熊本星翔の応援団が、アルプスを再現するように声援を送った。部員は手をたたいて応援歌を歌い、明るい笑顔を見せた。
その動画を甲子園で視聴した田中義浩校長(57)は「間に合わないかもしれないが、こちらに向かい、応援してくれている」と感謝。一進一退の攻防が続くグラウンドを祈るように見つめた。
勝利を信じる歌声が通じたのか、東海大熊本星翔は打線が爆発。2桁得点を記録し、この日、試合終了まで間に合わなかった応援団に次の試合を用意した。
野仲義高監督は「学校、卒業生らが待ちに待ったきょうの初勝利。今回は大雨のせいで応援に来られなかった県民の皆様、在校生もいるので、次も良い試合を見せて元気づけたい」と次戦の勝利を誓った。
2回戦は15日午後3時半から、県岐阜商と対戦する。【山口響、清水夏姫】
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