
親の約7割が子どもの歯磨きがうまくできなくて罪悪感を持ったことがある――。
サンスターグループの意識調査でこんな結果が明らかになった。
歯磨きを嫌がる子どもとどう接したらいいのか。
また、歯が生えそろう年ごろの歯磨きで気を付けるポイントは?
現役保育士で交流サイト(SNS)やテレビ番組などで育児のコツを伝えているてぃ先生と、歯の専門家にアドバイスをもらった。
子育ての悩みの2位に「口のケア」

サンスターグループが6月、0~6歳の子どもを持つ男女1000人を対象にインターネット調査を実施した。
子育てで気になることや悩みを尋ねた質問(複数回答)では「子どもの社会的な習慣やしつけ」が49・7%で最も多く、次いで「子どものお口周りのケア」が41・0%と続いた。
「子どもの歯磨きがうまくできなくて罪悪感を持ったことがあるか」という設問では「よくある・よくあった」24・0%、「時々ある・時々あった」46・3%となり、罪悪感を感じたことがある人は計70・3%に上った。
子どもの歯磨きの困りごと(複数回答)として挙がったのは「磨き残しがないか不安」が34・3%と最多で、「嫌がってうまく歯を磨けない」「仕上げ磨きが正しくできているか不安」と続いた。
歯磨きを嫌がる子の家庭は……

子どもが仕上げ磨きを嫌がる場合はどうすればよいのだろうか。
「歯磨きを嫌がるお子さんがいる家庭は、完璧に仕上げ磨きをしようという意識が強いのではないでしょうか」
てぃ先生は、完璧を求めすぎない方がよい、とアドバイスする。
「磨き残しがないようにと一生懸命になって、長時間になったり、力が入ってしまったり、怖い顔をしてしまったりして『歯磨き嫌い』につながりがちです。仕上げ磨きの時間を親子のコミュニケーション時間と捉えた方が、お子さんへの対応も穏やかになるのではないかと思います」
親も一緒に「変顔」をして歯磨きをしてみる、子どもの好きな音楽を流して音楽が止まったら歯磨きを止めるといったゲームをしてみるなど、子どもにとって「親と遊べる時間」にすることがポイントだという。

歯磨きキャンセルはあり?
また、てぃ先生は「毎日歯磨きして、途切れさせないことが大事です」と指摘する。
家事や育児で忙しかったり、子どもの機嫌が悪かったりして「今日は子どもの歯磨きをしなくてもいいか」と諦めたくなる日もあるかもしれない。
てぃ先生は「『今日はどうしてもできない』という日があるかもしれませんが」と理解を示しつつも、習慣化の大切さを説く。
「例えば『前歯だけでもやろう』という形で提案してみる。特例をつくると、子どもは『やらなくていい日もあるんだ』と思ってしまうからです」

子どもの歯磨きのポイント
歯磨きの専門家も、歯が生えそろう過程の子どもは仕上げ磨きが必須と説く。
サンスター財団の歯科衛生士、平塚江玲奈さんは「生後6カ月ごろになると下の前歯から生え始めますので、寝る前に1日1回仕上げ磨きをしましょう」と呼びかける。
虫歯予防のため、フッ素(フッ化物)入りの歯磨きペーストは生後6カ月から、年齢に応じた量や濃度で使うことが推奨されている。
仕上げ磨きの姿勢は「寝かせ磨き」の他に、「立たせ磨き」も可能だが、歯ブラシで喉を突く事故を防止するため、後ろに壁がある場所で実施したい。

3歳ごろになって「自分でやってみたい」と興味を持ったタイミングで1人磨きをスタートするのがおすすめだ。
ポイントは、歯ブラシを「優しく小さく」動かすこと。
ゴシゴシと強く磨いてしまう子もいるので、「音が聞こえないように磨いて」と声を掛けるといいという。
虫歯リスクの高い3カ所
平塚さんは「上の前歯は生後8カ月ごろから出てきますが、虫歯のリスクが非常に高い場所です」と強調する。
歯と歯茎の境目、歯と歯の間を丁寧に磨くことが大切だ。さらに、1歳半ごろに出てくる奥歯の溝も虫歯になりやすい。この3カ所に注意してほしいとアドバイスする。

虫歯リスクが高い場所を磨くときはコツがあるそうだ。
歯ブラシが上唇小帯(上唇の裏側から上の前歯の歯茎へと伸びる筋)に当たると痛い思いをして歯磨きが苦手になってしまう。筋を指で押さえて、前歯の左右を1本ずつ磨くとよい。
子ども用歯ブラシで奥まで仕上げ磨きをすると痛いと感じる子もいるので、先が小さめの仕上げ用の歯ブラシを使うといいという。乳歯が生えそろったら、デンタルフロスを使うことも勧めている。
仕上げ磨きはいつまで?
平塚さんは「小学生の間は仕上げ磨きを継続してください」とアドバイスする。

12歳ごろまでの、乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」は、歯並びが一時的に不安定になり、磨き残しなどで虫歯になりやすいためだ。
インターネット調査で、歯磨きに関する知識を5項目挙げたうち、最も認知度が低かったのが「仕上げ磨きは12歳ごろまで実施することが推奨されている」で、69・2%が「知らなかった」と回答した。
2人の子どもの母親でもある平塚さんは「子育て中の歯磨きの時間帯はとてもバタバタすると思いますが、磨きやすい歯ブラシを使って、虫歯になるリスクが高い場所を踏まえて磨けば、パパやママ、お子さんにとっても負担が減るのではないかと思います」と話している。【御園生枝里】
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