連日の厳しい暑さで体調を崩すペットの犬や猫が相次いでいる。
<朝6時でも散歩が暑すぎる>
<移動中にペットが熱中症になってしまった>
<出掛ける時は、カートに扇風機で対策してます>
X(ツイッター)にも、飼い主のそんな声が数多く投稿されている。
熱中症を予防するにはどうすればいいのか。発症後の対応は?
「例年より1、2割多い」
大阪府吹田市にある動物病院「はしもと吹田アニマルクリニック」では、熱中症やその疑いで受診する犬や猫が5月末ごろから増え始めた。
「例年より時期的に早く、全体の受診に占める熱中症の割合も1、2割は多い印象です」
そう話すのは、クリニック院長で獣医師の橋本雄大さん(31)だ。
診察に訪れた時には呼吸困難に陥っていて、気管挿管して一命をとりとめた例もあったという。
橋本さんは「熱中症はすぐに対応しないと命に関わる。『軽度かも』と思ってもためらわず、早い段階で受診してほしい」と呼び掛ける。
約半数が「暑い時期に犬猫が体調変化」
犬や猫は人のように汗腺が発達しておらず、汗をかいて体温を下げることができない。そのため、体温調節が難しく熱中症になりやすいという。
実際、ペット保険の「アイペット損保」(東京都江東区)が昨年9月に犬の飼い主500人を対象にインターネットで実施した「<犬編>ペットの暑さ対策に関する調査」では、53%が「暑い時期に犬の体調に変化を感じた」と回答した。
飼い犬が熱中症と診断されたことがあるとした人は全体の9・4%で、「暑さによる不調だと診断されたことはありますか」との問いには16・6%が「はい」と答えた。
同じ時期に猫の飼い主500人に行った猫編の調査でも、暑い時期に猫の体調に変化を感じた人は45%に上った。飼い猫が熱中症と診断されたことがある人は5・8%、暑さによる不調と診断されたことがある人は10・2%いた。
熱中症のサインは
では、ペットのどんな様子が熱中症のサインと考えられるのか。
橋本さんによると、特に注目すべきなのは呼吸と体温だ。呼吸が速く「ハアハア」が止まらない、体や耳が熱いといった場合は熱中症の可能性が高い。
他にも、ぐったりする、よだれがたくさん出る、吐くなどの症状が表れることもある。
悪化すると、荒い呼吸をし始め、舌や口の粘膜が青紫色になる「チアノーゼ」の症状が出て意識を失うことがあるが、その時はもう「一刻を争う状況」だという。
予防と発症後の対応どうすれば
熱中症を予防するには具体的にどうすればいいのか。
熱中症の危険が高まるのは、クーラーのない室内での留守番や、暑い時間帯の散歩などだ。そのため、ペットを置いて出掛ける際は室内を25~28度に保つことが望ましい。
散歩も気温が低い早朝などに行うか、土や芝生を通るコースに変えることも効果的だという。
「あまりにも暑ければ、散歩をやめることも一つの手だと知ってほしい」
万が一発症した場合は、できるだけ早く受診することが基本となる。
応急処置としては、ぬらしたタオルを全身にかけたり、首元やそけい部などにある太い血管を氷のうなどで冷やしたりすることが有効だ。
肉球やけどにも注意
一方で、暑い時期に注意すべきなのは熱中症だけではない。
「気温が35~40度程度でも、アスファルトは50度以上の高温になることはざら。マンホールの上なんて熱した鉄板そのものです」
肉球をやけどしないようにするには、専用の靴や靴下をはかせることも効果的だが、まずは飼い主が手で地面に触れ、温度を確認して安全かどうかを判断する必要がある。
橋本さんは「動物は想像以上に熱を感じている。人よりも暑さによるリスクは高いことを認識すべきだ」と警鐘を鳴らす。【田中理知】
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