福岡の土地高値買収、県が「不適切」認める 補償額を見直す方針

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当初算定した適正価格の約5倍の高値で用地を取得したことについて「不適切だった」と述べる福岡県土整備部の二場正義次長(右)と山口甲秀次長=福岡市博多区の福岡県庁で2025年8月13日午後5時38分、栗栖由喜撮影 拡大
当初算定した適正価格の約5倍の高値で用地を取得したことについて「不適切だった」と述べる福岡県土整備部の二場正義次長(右)と山口甲秀次長=福岡市博多区の福岡県庁で2025年8月13日午後5時38分、栗栖由喜撮影

 道路整備に伴う用地買収を巡り、福岡県が当初算定した補償額の約5倍の高値で地権者から土地を取得していた問題で、県は13日、県庁で開いた記者会見で適切でなかった点が複数あったとし、不適切な用地買収だったと認めた。地権者から今回の用地買収について再度検討したいとの申し出があったと明らかにし、不動産鑑定士らの見解も踏まえて補償額を見直す方針。

 問題となっている土地は、福岡県赤村にある計2505平方メートルの山林。県道の整備事業に伴い、県が2025年4月、地権者で部落解放同盟福岡県連の副委員長の男性(75)と買収契約を結んだ。県は6月、男性に用地補償として計2165万円を支払った。

 しかし、毎日新聞が入手した内部資料などから、県は買収交渉を始めた24年10月、適正な補償額として430万円を提示していたことが判明。交渉を担当した県の出先機関「田川県土整備事務所」は、男性に安価だなどとして難色を示されると、2度にわたり委託業者に土地の評価をやり直させ、最終的に当初算定額の約5倍に値上げしていた経緯が明らかになった。

 13日の会見には、県事務所を管轄する県土整備部の二場正義次長らが出席。「現地の状況を把握せずに2度にわたり、提示額を変更したことは適切ではなかった」とした。

 増額については、山林の約半分(1099平方メートル)を「造成地」と評価し直し、整備費用などを加算したことが大きく影響した。県事務所は、その際に委託業者に「平米単価1万3700~1万4400円」とする「希望単価」を示し、造成費名目での加算を求めていた。

 県は会見で、当初は山林価格で算定したが、地権者から交渉で「山林ではない。宅地に近い」「坪単価2万~3万円が相場」などと言われたため、2度にわたって土地評価をやり直し増額したと説明。地権者が示した「相場」に沿うように「希望単価」を伝えたことについて「参考として伝えた。(この値段に)近づけさせようとしたわけではない」と述べたが、「今となっては不適切だった」と陳謝した。

 委託業者は県の希望単価に沿って評価をやり直し、造成地を「平米単価1万3900円」とした。県事務所は、これにさらに3600円を上乗せし、最終的に「同1万7500円」と算定していた。この造成地の値段の高さは周囲と比べて突出していた。福岡県が24年に示した赤村の基準地価(住宅地、3カ所)は平米単価3800~6550円で、その約4・6~2・6倍に当たる。周囲の宅地の標準的な取引価格(平米単価9000円)=坪単価2万9752円=と比べても約1・9倍だった。

 県は会見で、この点についても「周辺の宅地価格よりも高額になっており、不適切だった」と陳謝。一方で「(増額したのは)副委員長の機嫌を損ねたくなかったわけではない。早期に用地交渉を妥結して速やかに発注したかったからだ」などと述べ、地権者にそんたくしたとの見方は否定した。

 県は今後の再発防止策として、造成費を加味するなど特殊な算定の場合は、出先機関だけでなく、本庁と協議して決めるように改めるという。【志村一也、栗栖由喜、川畑岳志、金将来】

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