
珍しいピアノ協奏曲が演奏会のプログラムに並ぶ。
それは近年、再評価が進む作曲家による「左手のためのピアノ協奏曲」。
9月にこの曲を指揮する阪哲朗さんは「内緒で右手をちょっと使いたくなるような難曲」だと話す。
音楽的エリートと共演
京都市出身の阪さんは京都市立芸術大で作曲を学んだ後、ウィーン国立音大指揮科に留学した。1995年、若手指揮者の登竜門とされるブザンソン国際指揮者コンクール(フランス)で優勝し、国際的な注目を浴びた。
これまでに欧州の歌劇場で音楽監督などを歴任し、現在は山形交響楽団常任指揮者や、びわ湖ホール芸術監督を務めている。
「難曲」と語る協奏曲は、紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)の演奏会で披露する。
KCOは日本製鉄紀尾井ホール(東京都千代田区)を本拠地とする室内オーケストラ。阪さんは2013年の定期演奏会で初共演し、以来、たびたびKCOを指揮してきた。
阪さんはオーケストラとしては小ぶりなKCOを「オーケストラのミニチュア」ではなく「室内楽」と捉える。同時に、各奏者がソリストのように弾ける「音楽的エリート」の集まりだと評価する。
「本来は16型(第1バイオリンが16人の大オーケストラ)も室内楽の延長でなければいけないんですが、(本番に向けての)2~3日の練習期間ではなかなかそこまで(究めること)は難しい。その点、KCOは最初からエンジン全開で、試行錯誤がしやすい」
そして、たとえ採用されない案だとしても、実際に試してみることが大事だという。さまざまな可能性を一つずつ確かめ、「これは違う」という解釈を共有する…
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