高校野球・夏の甲子園2回戦(14日)
○沖縄尚学3―0鳴門(徳島)●
早速訪れたピンチに悪夢がよぎった。
今春のセンバツ、2回戦の横浜戦で先発し、1回3失点でマウンドを降りた記憶だ。
しかし、追い込まれて頭が真っ白になっていた、春までの自分はそこにはいなかった。
沖縄尚学の先発右腕・新垣有絃(ゆいと)は一回1死二、三塁のピンチで動じることはなかった。
鳴門の看板打者である4番・稲山壮真には変化球を3球続け、最後は外いっぱいの143キロの直球で見逃し三振。続く、橋本朋来には外角のスライダーを振らせ、連続三振でしのいだ。
投球の軸となる鋭く落ちるスライダーがさえ渡った。
カウントも取れる緩いスライダーと140キロ台の伸びのある直球を織り交ぜ、ウイニングショットは腕を強く振ったスピンの利いたスライダーだった。
六回からは同じ2年のエース左腕・末吉良丞(りょうすけ)にマウンドを譲ったが、連打を許さずピンチをしのいだ。比嘉公也監督から「ノルマ」と言われていた5回を投げ、無失点で役目を果たした。
センバツの横浜戦では変化球の制球が乱れ、「自分を自分で追い詰めていた」。3点本塁打を打たれ、力不足を痛感した。
得意としていたスライダーは曲がり始めるのが早く、打ち取るためにも打者の手元で鋭く曲げたかった。
助言を求めたのはライバルであり、友でもある末吉だった。
「リリースをもっと前に」
その言葉を胸にブルペンで磨きをかけ、この日奪った八つの三振の数こそが、成長した証しだった。
とはいえ、ボール先行となる場面もあって、本人の自己採点は「50点」で、この日の投球には納得していない。
新垣は「今度は最後まで投げたい。目標は優勝」と力を込める。
春の悪夢を歓喜に変えるために、右腕は成長を続ける。【村上正】
Comments