「関電の原発新設」で電気料金上がる?経産省に聞いてみた

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電気料金が高くなる?政府の原発支援策(3)

 「原子力は他電源と遜色ないコスト水準だ」「原子力の再稼働が進展している九州エリアや関西エリアで電気料金は他エリアよりも最大で3割程度安い状況にある」。政府が2025年2月に閣議決定した「エネルギー基本計画」は、原発が安価であることを強調している。それなのに、なぜ政府は電気料金で原発を支援するのか。支援の拡充で電気料金が上がるのではないか、経済産業省に聞いてみた。

 関西電力が美浜原発(福井県美浜町)で新たな原発の建設やリプレース(建て替え)を検討するため、地質調査を再開すると25年7月に発表した。これに呼応する形で、政府は原発の建設費や維持費を電気料金に上乗せして支援する仕組み「長期脱炭素電源オークション」を拡充しようとしている。

 長期脱炭素電源オークションの支援策が広がると、関電のように新たな原発の建設を検討する大手電力には有利となる。しかし、全国の消費者の電気料金が上昇する可能性がある。インフレなどで原発の建設費が上昇した場合、電気料金を通じて消費者が負担する形になるからだ。

 長期脱炭素電源オークションを所管する経産省は、通産省だった1995年から電力自由化を段階的に進めてきた。再生可能エネルギーなどの新電力を新規参入させ、大手電力と競争させることで電気料金を引き下げ、消費者の選択肢を増やすのが狙いだった。

「電力自由化で電源投資は難しい」

 そこで筆者は「原発は建設費を含む発電コストが安いと政府は主張してきたのに、なぜ長期脱炭素電源オークションのような仕組みを作り、原発を支援するのか。今回の支援策の拡充は電力自由化に逆行し、電気料金が上がってしまうのではないか」と、経産省の担当者に聞いてみた。

 経産省の担当者は「長期脱炭素電源オークションは発電コストが高い電源を支援するものではない。電力自由化の中では電力の市場価格がどうなるかわからない。市場価格が高くなれば電力事業者は投資を回収できるが、低くなれば回収できない。長期的にコスト回収の予見可能性が確保されていないと、電源開発の投資に踏み切れない。それを支援するのが制度の目的だ」(資源エネルギー庁電力基盤整備課)と答えた。

 電力自由化について、経産省は「データセンターや半導体工場などの建設で大規模な電源投資が必要な時代に突入している。電力システム改革時には必ずしも想定していなかった状況の変化が生じており、…

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