プラスチック汚染根絶に向けた国際条約について話し合う国連の政府間交渉委員会は15日、今会合での条文案の合意を断念し、先送りすることを決めた。ルイス・バジャス議長(エクアドル)が13日に示した条約草案に対し、多くの国から反対意見が殺到。15日に修正草案が示されたが、各国の意見の隔たりは埋まらなかった。
2022年の国連環境総会で各国は、24年末までにプラ汚染根絶のための法的拘束力のある国際条約を作ることを決議した。しかし、24年11~12月に韓国であった前回交渉委で各国の意見は折り合わず合意を先送り。今回の交渉委は「延長戦」との位置づけで、今月5日に再開され、14日までの予定だった会期を1日延ばして合意が模索されたがまたも結論が出なかった。
議長が13日に各国に示した条約草案は、最大の争点だったプラ素材(ポリマー)の生産規制に関する条文を丸ごと削除するなど、生産段階の規制に強硬に反発する産油国側に譲歩した妥協色の濃い内容だった。
強い規制を求める欧州連合(EU)などが主張してきた国際的なプラ素材の生産・消費量の削減目標設定は、従来の議長案の選択肢から落とされ、同じくEUなどが求めてきた使い捨てプラ製品の段階的廃止などに関する文言も削られた。
これに対し、EUや島しょ国、中南米などの国々は「許容できない」とこぞって反発。多くの点で主張に沿う草案になったはずの産油国サウジアラビアの代表からも「多くのレッドライン(譲れない一線)を越えている」と反対意見が出るなど、賛同はほとんど聞かれなかった。
13日夜以降、地域ごとに分かれた協議などが断続的に開かれたが、今回の同意取り付けは不可能と判断された。【ジュネーブ高橋由衣】
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