第二次世界大戦の終結から80年を迎え、かつての戦勝国、敗戦国は、戦争をどう総括し、継承しようとしているのか。
ドイツ東部ドレスデンで連邦軍が運営する軍事史博物館。「被害」と「加害」という戦争の両面を描くことにとどまらず、戦争が人間の営みに及ぼす影響をさまざまな角度から検証している。
博物館4階にある展望スペース。ガラス張りの壁の向こうに一望できるドレスデンの街は、1945年2月に連合国軍の大規模な空襲を受け、2万5000人が命を落とした。
だが、ドレスデン空襲の遺構の前に来館者が目にするのは、独軍が39年9月の第二次世界大戦開戦日に空爆したポーランド中部ビエルニの遺構だ。穴があき、ひびが入った歩道の敷石が、空襲後の惨状を再現している。
さらにドレスデンの遺構の横には、空襲で家族を失った少年の体験をつづるパネルと並び、被害に遭ったユダヤ人女性の生涯が紹介されていた。女性は強制収容所に連れて行かれる予定だった日に空襲があり、混乱の中で収容を免れた。
「戦争は、始めた方に跳ね返ってくる。ドレスデンの住民は空爆の犠牲者ですが、(ナチス・ドイツのユダヤ人迫害に加担した)加害者の側面もある。そうした多面性の表現を重視している」。館長で歴史学博士でもあるルドルフ・シュラッファー大佐は展示に込められた意図をそう説明する。
博物館がある場所は19世紀以降、軍の施設として…
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