渡部潤一・選 『天文台日記』=石田五郎・著

Date: Category:カルチャー Views:2 Comment:0

 (中公文庫 1100円)

 昭和40年代、理科少年だった私は昆虫採集、水棲(すいせい)生物採集、石集め、ラジオ工作、天体観察などに幅広く手を染めていた。G社の雑誌の付録を毎月楽しみにしていた世代である。アポロの月着陸、火星の大接近などの影響か、理科少年は次第に天文少年へ変わっていった。天体望遠鏡を手に入れたのは小学校5年生の時だったが、その頃、「天文学者」という職業があることを知った。だが具体的にどういう仕事なのか、天文台の職員はどんな生活をしているのか、想像もできなかった。天文の図鑑や本には、天体の紹介や天文学の解説はあるものの、天文学者の実態など書かれていなかったからだ。

 転機は夏休み、父の実家がやっている店に遊びに来ていた時だった。なにげなく近くの本屋に入るや、「天文台日記」というタイトルが目に飛び込んできた時の衝撃は今でも忘れることができない。当時、日本一大きな天体望遠鏡がある旧岡山天体物理観測所(現在は国立天文台ハワイ観測所岡山分室、当時は東京大学附属東京天文台)に勤める天文学者の1年間にわたる生活をつづったエッセーであった。早速、買い求め、店の裏にある小さ…

Comments

I want to comment

◎Welcome to participate in the discussion, please express your views and exchange your opinions here.