飯島洋一・評 『普通の組織 ホロコーストの社会学』=シュテファン・キュール著、田野大輔・訳

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 (人文書院・6600円)

「特別に選ばれた人員」は必要なかった

 ポーランドのユゼフフ村で、ハンブルクから派遣された第101警察予備大隊――大半が普通の職人や商人の民間人――が歩けないユダヤ人を至近距離から射殺し、残りを絶滅収容所へ移送した。著者はそう論じている。

 なぜ「普通の人びと」が、ユダヤ人を殺戮(さつりく)できたのか。この問いについては、クリストファー・R・ブラウニングの『増補普通の人びと』(谷喬夫訳、ちくま学芸文庫)やダニエル・J・ゴールドハーゲンの『普通のドイツ人とホロコースト』(望田幸男監訳、ミネルヴァ書房)という研究書がすでに出版されている。

 ブラウニングはこの分野の先駆者で、「仲間集団は人びとの行動に恐るべき圧力を行使し、道徳的規範を制定する」として、組織内部の同調圧力が虐殺を可能にした要因だったと結論付けている。

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