高校野球・夏の甲子園2回戦(15日)
●東海大熊本星翔3―4県岐阜商○
県岐阜商・駒瀬陽尊選手
3―3の同点に追いつかれて迎えた八回表、2死一、二塁で打席に立った。ここ大一番の場面。4球目のスライダーに「食らいついた」という打球は、鋭く右翼へ飛び、はねて適時打に。勝ち越しの1点となった。
「球種は狙っていなかったが、下級生がチャンスを作ってくれたので。最高でした」
「岐阜県ナンバー1打者」と評される強打者。今夏の岐阜大会も打率は4割を超えた。チームの後輩からは「攻守ともに尊敬する先輩」と信頼を寄せられる。しかし、1回戦では無安打に終わっていた。期待通りの活躍を果たし、ようやく笑みがこぼれた。
小学1、2年生のころ、夕食後から午前2時ごろまで、父圭司さん(52)らに手伝ってもらいながら、バットを振っていた。高校でも他の選手が練習を終える中で一人、自分が納得するまで練習していた。そんな姿を知るマネジャーの岩田愛菜さん(3年)は「野球が大好きで、努力家。中学時代から会話はずっと野球のことばかりでした」とたたえる。
今年4月、右手首が痛くなった。疲労が要因とみられ、1カ月間、満足に練習ができなかった。痛みを家族にも漏らすことはなく、圭司さんは「不安はあったと思う。壁にぶち当たっても、自分の中で乗り越えてきた」と寡黙な息子を思いやった。
次に狙うのは、次戦に勝って16年ぶりのベスト8入りを果たすこと。「目の前の相手に食らいついていきたい」と静かな闘志を燃やす。【道下寛子、長岡健太郎】
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