「自然の声を聞く」酒造り 手間暇かけ、芳醇に 滋賀県の「へー」

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上原酒造の木槽と天秤。防腐用に塗り重ねられた柿渋で黒光りしている 拡大
上原酒造の木槽と天秤。防腐用に塗り重ねられた柿渋で黒光りしている

 2025年の夏、いかがお過ごしでしょうか。暑さ対策をしつつ、旅行や帰省の計画を立てている人も多いのでは? 今回は全国各地の「地域トリビア」を厳選して紹介します(随時掲載)。家族や旧友、旅先の人たちとの話題にチェックしてみてください。ふるさとの意外な一面も見えてくるかもしれません。

伝統製法守り続ける酒蔵

 酒を醸すには、人の手には届かない領域が数多くある。米、水、微生物、気候。挙げればきりがない。「だからこそ、自然の声をよく聞きたい」と「上原酒造」(滋賀県高島市)6代目の上原績(いさお)社長は言う。幕末の文久2(1862)年創業。全国でも珍しい伝統製法を幾つも守りながら、自然と対話する酒造りを続けている。

 まずは天然の微生物をいかした「山廃仕込み」。蔵にすみついている天然酵母だけを用いる。多くの会社は、安定的な発酵が期待できる日本醸造協会の清酒酵母を添加する。蔵付き酵母は制御が難しく、通常の3倍も時間も手間もかかるが、創業当初から残る蔵の酵母は、自然の力を呼び込み、力強い味わいと芳醇(ほうじゅん)な香りを生む。

 そして「木槽天秤(きぶねてんびん)しぼり」。縦3.5メートル、横1メートル、深さ1.2メートルのサクラの木槽に8リットル入りの酒袋を200以上詰め、長さ約8メートルのカシの天秤棒に石の重りを下げてしぼる。機械なら半日程度だがこの方法だと3昼夜かかる上、機械に比べて出てくる酒の量は85%。でもその分、雑味の少ないふくらみのある酒に仕上がる。また、酒をたっぷり含んだ酒かすの芳醇なことといったら……。

 この頑固な酒蔵が、2023年度から新たな挑戦を始めた。琵琶湖の固有種「ニゴロブナ」などの魚が湖から遡上(そじょう)して産卵し、稚魚が育つことで農薬や化学肥料の使用を半減させられる「魚のゆりかご水田」。そこで栽培されたコシヒカリを使った酒造りだ。挑戦もやはり、自然との対話だった。

 「精いっぱいやって、後は自然に委ねる。僕らにできることはそれしかありません」と話してくれた上原社長の目には、穏やかな自信が宿っているように見えた。

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