2025年の夏、いかがお過ごしでしょうか。暑さ対策をしつつ、旅行や帰省の計画を立てている人も多いのでは? 今回は全国各地の「地域トリビア」を厳選して紹介します(随時掲載)。家族や旧友、旅先の人たちとの話題にチェックしてみてください。ふるさとの意外な一面も見えてくるかもしれません。
改良重ね、一大産地に
多彩で鮮やかな体色で「泳ぐ宝石」とも呼ばれるニシキゴイ。だが、新潟がその発祥の地とされることは、あまり知られていない。
1931(昭和6)年、当時の新潟県水産試験場がまとめた資料に記録がある。江戸期の文化文政年間(1804~30年)の頃、現在の小千谷市と長岡市・山古志地域の、かつて「二十村郷(にじゅうむらごう)」と呼ばれた地域でのこと。雪国での貴重なたんぱく源として食用で飼われていたコイに突然変異で色がついたものが現れ、改良したのが始まりとされる。資料に、白いコイのえらぶたにだけひいろの斑紋がある「頰赤(ほほあか)」と言われる品種などがこの頃に交配によって出現したと伝わる、とある。
その後も改良が繰り返され、一大産地となった。農林水産省の2023年の統計によると、ニシキゴイの全国販売量約257万匹のうち、新潟県は約109万匹を占め、2位の岡山県(約31万匹)を大きく突き放している。
小千谷市に国内でも珍しい、歴史も含めてニシキゴイ専門の展示施設「錦鯉の里」がある。マネジャーの平沢勝佳さんに話を聞いた。ニシキゴイの品種は約100種以上に上る。代表的なのは白い体に赤色のみの模様が入る「紅白」▽紅白にさらに「漆墨」と呼ばれる黒い模様が入り、大正初期に作られた「大正三色」▽大正三色よりも黒色が多く、昭和初期に作られた「昭和三色」――の「御三家」。「写りもの」「光りもの」「ドイツ鯉」などもある。
錦鯉の里で約20種、約260匹のニシキゴイが悠々と泳ぐ姿を眺めた。平沢さんは「ニシキゴイは一つとして同じ模様がないのが楽しい。互いに争うこともなく、見ていて癒やされる」と語る。繊細な斑紋や、まばゆく輝く姿はまさに宝石と言えた。
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