前回の優勝投手を、ただ祈るように見つめていた。
19日にあった全国高校野球選手権大会準々決勝。山梨学院に敗れた京都国際のエース左腕・西村一毅(いっき)投手(3年)は甲子園のマウンドに立った。
アルプスにいた両親は、堂々と投げ続ける息子の姿から、心の成長を感じ取った。
先輩に甘える場面もあった昨夏
西村投手は滋賀県出身で、京都国際入学と同時に寮生活を始めた。
背番号「11」だった昨夏の甲子園では、4試合に登板して24イニングを投げ、防御率0・00。決勝でも救援し、優勝投手になった。
父弘克さん(50)と母則子さん(51)によると、西村投手は小さい頃から前に出るタイプでなく、胸の内はあまり明かさない性格だった。
京都国際に入学後、帰省するのは月1回ほど。今夏の京都大会の前に帰ってきた時も、弘克さんが「頼むで」と声を掛けると、いつも通りひょうひょうとしていた。
ただ、野球部のスタッフからは「去年は先輩に甘える場面もあったが、今年は違う。緊張している」と聞いていた。
今春の選抜大会は出場できず、エースとして挑む高校最後の夏に、強い思いを抱いていることが分かった。
新聞記事やテレビのニュースで見せる息子の姿は、明らかに以前と違った。
則子さんは言う。「この1年で顔つきが変わりました。しっかり自分で考え、みんなの前に出て練習していることが分かりました」
弘克さんが気になっていた、ストライクが取れない時に投手プレートを蹴るような仕草は見せることがなくなった。
西村投手は今大会、優勝候補だった健大高崎(群馬)との初戦を160球で完投し、次戦の尽誠学園(香川)戦でも好救援した。
3試合目となる準々決勝は先発マウンドに上がった。ただ、山梨学院の強力打線を抑えることができず、6回9失点で降板した。
西村投手は涙こそなかったものの、悔しさをかみしめた。
「先輩に連れて行ってもらった甲子園に、今度は自分が連れて行こうとやってきました。応援してくれた両親には、ありがとうと伝えたいです」
試合後に集めた甲子園の土は、両親にプレゼントする。【黒詰拓也】
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