高校野球・夏の甲子園準々決勝(19日)
○山梨学院11―4京都国際●
待っていた。インコースの真っすぐだ。1点を追う二回無死。山梨学院の4番・横山悠は狙い球を気負うことなく引っ張った。白球は大きな弧を描き、レフトポール際に飛び込んだ。同点ソロ。歓声の中で、チームは息を吹き返した。
チェンジアップ2球とスライダーで、カウント2ボール1ストライクの場面。「4球続けて変化球はさすがにない」と読んだ。厳しいコースだったが、バットを最短距離で出し、腰をくるりと回してかっ飛ばした。これが公式戦初アーチ。「普段から内角を打つ技術を磨いてきた」と喜びをかみ締める一振りだった。
京都国際のエース左腕・西村一毅は一級品のチェンジアップを持つ。対策は低めのボール球を見切り、カウントを稼ぐ直球を仕留めること。言うはやすし、行うは難しだが、捕手らしい横山の割り切りと確かな技術がそれを可能にした。
こうなれば止まらない。5番の平野天斗は「4番が、チームがやるべき打撃を見せてくれた。勇気をもらった」と、横山と同じく変化球を見極めて直球を引っ張り、左前打で続いた。後続も打って好機を広げ、この回計5得点。試合を決めた。
横山の一発は今大会第8号。2024年春に反発性能を抑えた新基準の金属バットが本格導入されて以降では、春夏の甲子園の1大会最多を更新した。
一回に先行を許したが、終わってみれば大勝だ。横山は「本塁打は試合の流れを変えられる」としみじみと振り返った。「ホームランは野球の華」は古くからの格言だが、高校野球では希少になった今だからこそ、その価値は計り知れない。【石川裕士】
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