岐阜県土岐市で1月、市消防本部が119番を受けながら救急車を出動させず路上生活者の50代男性が死亡した問題で、市の第三者委員会は「直ちに救急車を出動させるべき事案だった」として不適切な対応だったと結論付け、再発防止策などを求める報告書を加藤淳司市長に提出した。
事案は1月13日に発生。高架下で毛布に横たわる男性を見つけた市民から「様子がおかしい」と119番があったが、消防は緊急性が低いと判断し、救急車を出動させなかった。男性は翌日に心肺停止の状態で発見され、死亡が確認された。
報告書によると、通報時は通信指令員2人が勤務していた。市民が「反応がない。亡くなっている可能性もある」と伝えたが、指令員の一人は「寝とるだけやないか」と判断。対応の相談を受けた別室の当直責任者も「まあええわ。様子見よう」と回答したという。
報告書は「(出動することに)迷うべき事情は見当たらない」と認定。マニュアルの未整備や指令員の教育不足から「出動するか否かの判断が職員によってまちまちになっていたと考えられる」と体制の不備を指摘した。
一方で、路上生活者だったことが出動の判断に影響したかについては「通報者から路上生活者であるとの情報を得ただけで出動不要と判断したとは認定できない」などとした。第三者委の矢崎信也委員長は19日に開いた記者会見でも「直接の原因になったとは考えていない」と否定した。
加藤市長は同日の会見で「市民の安全を守るべき立場でありながら、信頼を損ね深くおわびする」と謝罪。警察の捜査を踏まえ、関係職員らの処分を検討するとした。【安達一正】
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