北海道斜里町の知床半島にある羅臼岳(標高1661メートル)で登山者の20代男性がヒグマに襲われた事故で、駆除された母グマが男性を襲った個体だったことが判明した。加害個体は駆除されたが、羅臼岳では人を恐れないクマの目撃が相次いでおり、道は斜里町と羅臼町に発出している「ヒグマ注意報」を継続して警戒を呼びかけている。
男性は14日午前に襲われ、遺体は15日に山中で発見された。付近にいた親子3頭はハンターらに駆除された。
道立総合研究機構は3頭の肝臓からDNA型を採取。男性の衣類に付着していたヒグマの体毛、唾液とともに調べた。その結果、男性の衣類からは1頭分のDNA型のみが検出され、これが母グマのものと一致したことから、男性を襲った個体だと断定したという。
だが、道は14日夜に発出したヒグマ注意報の解除は見送った。背景には今夏、羅臼岳周辺で人に近付くヒグマの出没が続いている実態がある。
斜里町などによると、8月上旬には登山道の入り口付近に親子3頭が現れて車に接近。単独で行動するヒグマが登山者に近づき、クマよけのスプレーをかけても逃げないケースもあった。地元の猟師の男性は「人を恐れないヒグマは危険で、本来は目撃があった時点で対処しなければいけなかった。懸念していたことが起きてしまった」とため息をつく。
事故後に閉鎖された羅臼岳と硫黄山の登山口も利用再開の見通しはたっていない。周辺では事故の数日前から登山者につきまとう要注意個体が確認されており、今回の加害個体と同一か確認できていないためだ。環境省釧路自然環境事務所は「二度と事故を起こさないよう慎重に判断したい」としている。【後藤佳怜、片野裕之】
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