不法移民摘発に揺れる「機会の国」=金寿英(ワシントン)

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食べごろを迎えた桃の収穫作業に汗を流すアナ・バルセナスさん=米西部カリフォルニア州ベーカーズフィールドで2025年7月15日午前7時46分、金寿英撮影 拡大
食べごろを迎えた桃の収穫作業に汗を流すアナ・バルセナスさん=米西部カリフォルニア州ベーカーズフィールドで2025年7月15日午前7時46分、金寿英撮影

 「米国史上最大の国外追放」をスローガンに掲げるトランプ米政権の強権的な不法移民対策は、夏の収穫期を迎えた全米屈指の農業州・西部カリフォルニア州に暗い影を落としている。米国の農業現場に不可欠な移民労働者たちが摘発の標的になっているからだ。米国の農業労働者全体のおよそ3分の1が不法移民だとする試算もあり、影響は広範囲に及んでいる。

 7月下旬、広大な大地が広がる州中央部の一角で桃やサクランボを栽培するグレッグ・テシュさん(61)の果樹園を訪ねると、日中の強い日差しが照りつける中で収穫作業に汗を流す移民労働者たちの姿があった。20代前半で中米グアテマラから渡米して約30年間農業に従事するというアナ・バルセナスさんは「農業は創造的に工夫を凝らしながら働けるのでやりがいがある」と語る一方、「当局を恐れて働きに出てこれない同僚はたくさんいる」と漏らす。

収穫したブドウを箱に詰めるヒスパニック(中南米)系の労働者たち=米西部カリフォルニア州フレズノで2025年7月16日午後0時4分、金寿英撮影 拡大
収穫したブドウを箱に詰めるヒスパニック(中南米)系の労働者たち=米西部カリフォルニア州フレズノで2025年7月16日午後0時4分、金寿英撮影

 トランプ政権は「最悪な犯罪者たち」の国外追放を強調するが、実際には犯罪歴のない不法移民にも摘発の網を広げていると報じられている。テシュさんの果樹園周辺でも今年3月、移民・税関捜査局(ICE)などの連邦当局による取り締まりがあった。また別の日にはメキシコ出身の作業員から「当局の車両に追跡されて停車させられた。捜査員に在留資格の証明を求められた」と聞いた。「当局はヒスパニック系住民を手当たり次第、捕まえようとしている。法的に問題がなくても移民は誰もが安全ではないと感じている」と語る。

 重労働でもある農業は米国生まれの若者たちに敬遠される傾向があり、政権による強引な不法移民対策が続けば労働者不足が生じて生産に悪影響が出るとの懸念が農業関係者たちから上がっている。テシュさんは「移民1世ほど勤勉な労働者は他にいない。いろんな事情を抱えながら、より良い人生の機会を求めて国境を越えた移民たちによって米国の農業が支えられてきたのは事実だ」と強調した。

 「機会の国」とされる米国で新たな人生の道を切り開いた移民たちが社会に活気をもたらしたであろうという側面は想像に難くない。そのような国のあり方にトランプ政権の不法移民対策がどのような変容をもたらすのか注視していきたい。

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