トランプ米大統領は19日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対する将来的な「安全の保証」に関し、米軍の地上部隊の派遣を否定する一方、航空面での支援を検討していることを示唆した。FOXニュースの電話インタビューで語った。米国とロシア、ウクライナ首脳による3者会談を巡っては「因縁の地」であるハンガリーの首都ブダペストが候補地に浮上。3者会談の前提となるロシアとウクライナの首脳会談に向けた調整も本格化した。
トランプ氏、地上部隊の派遣否定
トランプ氏はFOXのインタビューで「地上部隊の派兵はないのか」と聞かれ、「私が(派兵はないと)保証する」と明言。「英国やフランス、ドイツなどが地上部隊を派遣したいと考えている。我々は彼らを支援する用意がある。おそらく航空面での支援だろう。誰も我々のような装備を持っていないからだ」と語った。こうした枠組みが「(ロシアとの)問題にならない」との認識も示した。
米政権は、ウクライナが望む北大西洋条約機構(NATO)への加盟は否定している。一方、域内への攻撃を「全加盟国への攻撃」とみなして集団的自衛権を行使すると定めたNATOの条約第5条に類似した形で、ロシアの再侵攻を防ぐための「安全の保証」を提供する方針を示している。
米ニュースサイト「アクシオス」によると、米国、欧州、ウクライナは「安全の保証」について協議するため、ルビオ米国務長官をトップとする委員会を設立。ウクライナの当局者は「今週中に一定の枠組みがまとまるかもしれない」と述べた。
一方、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談については、米国のバンス副大統領、ルビオ氏、ウィットコフ中東担当特使が調整を進めている。
開催地「多くの選択肢」
ホワイトハウスのレビット報道官は19日の記者会見で、プーチン氏が18日にトランプ氏と電話協議した際、ゼレンスキー氏と数週間以内に会談することを「約束した」と説明。首脳会談の開催地については「多くの選択肢が協議されている」と述べた。
AFP通信は、プーチン氏がモスクワでの開催案をトランプ氏に提示したが、ゼレンスキー氏は拒否したと報じた。フランスのマクロン大統領はスイスのジュネーブでの開催を提案している。
米政権は、ロシアとウクライナの首脳会談後、必要に応じてトランプ氏を交えた3者会談が実施されるとの見通しも示している。
米政治メディア「ポリティコ」は19日、ハンガリーの首都ブダペストが3者会談の有力な候補地に挙がっていると報道。トランプ氏の警備を担当する大統領警護隊(シークレットサービス)が既に現地で準備を始めた。ただ、最終的には変更される可能性もあるという。
ハンガリーのオルバン首相はトランプ、プーチン両氏と良好な関係だが、ウクライナにとってブダペストは「因縁の地」でもある。
ウクライナは1994年、ソ連崩壊後に国内に残された核兵器を放棄するのと引き換えに、領土保全が約束された「ブダペスト覚書」をロシア、米国、英国と締結。だがロシアは約束をほごにし、機能していない。ポリティコは仮に開催地がブダペストになれば「ウクライナにとっては不快な選択になるだろう」と指摘した。【ワシントン松井聡】
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