
「家庭教師のトライ」の運営会社トライグループ(東京都)が作成した中学生向けのオンライン教材で、水俣病が「遺伝する」と誤った情報で配信していた問題を巡り、同社は20日、新潟県内で社員らが参加する研修を実施した。
この問題では、同社幹部が7月中旬に来県し、新潟水俣病の被害者団体らに謝罪。このとき被害者団体などは現地視察や、新たな教材作成に向けて被害者らの声を聞くことなどを求めていた。
研修はこの要請を受け教材作成に生かす目的で行われ、この日は阿部正純・執行役員や教材製作担当の社員ら計14人が参加。今も症状に苦しむ患者や語り部の話を聞いたほか、新潟水俣病の被害者や支援者らでつくる団体による案内で、新潟水俣病の原因となったメチル水銀を排出していた旧昭和電工鹿瀬工場が見える高台や、工場排水が阿賀野川に注いでいた排水口などを見て回った。

トライグループの社員を前に、自らの症状や幼少期の暮らしを語った阿賀野患者会の皆川栄一さん(82)は「水俣病問題は今解決しなければ解決の機会をなくしてしまう。本当のことを伝えつないでいくことで、公害を二度と起こさないことを訴えていきたい」と伝え、同社の社員らからは「現在の阿賀野川についてどう思っているか」などといった質問が上がった。
研修を終えて同社の阿部氏は「大変貴重なお話をいただいた。子どもたちに分かりやすく伝える上で今日得た知識を生かしたい。(教材の)作成には環境省や各団体の確認も踏まえて仕上げる」と話し、2~3カ月後をめどに新しい教材を作成するとした。
皆川さんは「(同社の社員は)私たちが生まれ育ってきた環境を十分理解してくれたと思う。教材として間違っているものは直してもらい、どうやってこれからの世の中を、心豊かに積み上げていくか教材を通して伝えていってほしい」とした上で、「間違った教材が出ていたことに長期間気付かなかった環境省と文科省もしっかりと責任を自覚してほしい」と国に注文を付けた。【戸田紗友莉】
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