
中国経済を支える個人消費をけん引する都市はどこか? これまでは上海市や北京市など海に近い大都市が「常識」だったが、近年異変が生じつつある。中国社会の構造変化が背景にあり、日本企業もこれまでの中国戦略の練り直しを迫られている。
イオンが内陸部に積極出店するワケ
中国内陸部、湖南省の省都・長沙市。郊外にある地下鉄の終点駅を出ると、日本でも見慣れた広大な駐車場を備えたショッピングモールが現れた。2024年9月に市内1号店としてオープンした「永旺夢楽城(イオンモール)長沙星沙」だ。
記者が訪れたのは平日午前だが、店内は子供連れや若いカップルなどでにぎわっていた。同店の責任者である菅原基治・総経理は「中国の消費者はライフスタイルを重視する傾向に変わってきている。店内でゆったり過ごしてもらう体験型のサービスを重視している」と話す。
中国の消費は急速な経済成長を背景に、高級品やブランド志向が強かったが、近年は景気失速に伴う所得の伸び悩みなどもあり節約志向が定着。買い物よりも体験を重視する「コト消費」も注目されている。
このため、同店では館内に74カ所の休憩スペースを設けて「過ごしやすさ」を重視した。アトラクション施設を充実させ、入居テナントもスポーツやアウトドア用品店などが目立つ。屋外ステージで若者向けの音楽イベントなども開催しており、来店客数は当初計画よりも2割増、売上額も1割増と好調を維持。イオンは年内にも市内2号店を開業する予定だ。
中国社会の構造変化
イオンが内陸への積極出店を進めるのは「将来のファミリー層となる若者の人口が増えており、さらなる成長が期待できる」(菅原さん)ためだ。
24年末の人口は、北京市や上海市が前年より減少したのに対し、長沙市は10・3万人増えた。このほか、安徽省省都の合肥市(14・9万人増)や、四川省省都の成都市(7・1万人増)など内陸部の大都市の人口増が目立つが、若年層の流入が多いとみられている。
なぜ移住が進むのか。ポイントは「コスパ」だ。
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