時に厳しく、時に優しく選手たちの成長を見守ってきたからこそ、あふれる思いがある。
第107回全国高校野球選手権大会で、各代表校の監督たちは試合後のインタビューで思いの丈を語る。
勝利を手にした時、何を感じたのか。紡がれた言葉を振り返る。(勝者編と敗者編の2部に分けて紹介します)【構成・村上正】
8月8日・1回戦
○綾羽(滋賀)6―4高知中央●
春夏通じて初出場の綾羽が延長十回タイブレークの末、初勝利を挙げた。甲子園で最も遅く始まり、終了時刻も午後10時46分と最も遅くなった。
綾羽・千代純平監督
<ここまで遅い時間に野球をした経験は>
ないですね。なので九回に入る時に選手全員を集めて「空にある月を見なさい、甲子園で野球をしながら月が見える経験なんてないよって話しながら、ツキが向いてくるよ」なんて言ったら、追いつけたので良かったです。
<結果的に十回で試合を決める形になった>
十回のうちの打順の始まりが1番から。「打順が上位に回ったらなんとかできる」というのがチームの合言葉でもあるので、良いふうにとらえていました。
<1番の北川陽聖選手が自身6打席目で勝ち越しの2点三塁打>
5打席目の四球が、ベンチから見ていて良いタイミングが取れているなと思いました。
あの四球で終わると絶対に悔いが残ると思ったので、「もう、お前、打たせるからしっかり振れ」って伝えて送り出しました。
8月9日・1回戦
○西日本短大付(福岡)4―3弘前学院聖愛(青森)●
西日本短大付・西村慎太郎監督
非常に厳しい展開が多かったですが、僕の想像をはるかに超えた落ち着きようで、子どもたちはすごいなと思って見ていました。
<十回裏の守備は>
「とにかく踏ん張れよ」と送り出しました。(バントを試みた相手を捕邪飛にした捕手の)山下(航輝)のあのファインプレーは、ちょっとびっくりするようなプレーで流れを変えてくれました。
こちらの方がドキドキしていたんですが、(選手は)落ち着いているなという印象でした。
おかげさまで春も昨年の夏も(甲子園に)来させてもらったんですが、全然その時の雰囲気とは違って落ち着いていました。
<2番手の原綾汰投手が好投>
選抜高校野球の時に彼が横浜高校に打たれ、その時のことを彼がずっと自分で言っていました。
それからいろんな取り組みをして、今日は本当に原らしいピッチングができたので、非常に成長を感じます。
8月11日・1回戦
○東海大熊本星翔10―7北海(南北海道)●
東海大熊本星翔・野仲義高監督
<七回、スクイズ失敗後に一挙6得点>
選手が私のミスをカバーして、後ろにつないでくれた。みんなが一つになった。(4回目の出場で初白星)うれしいです。選手に感謝ですね。
甲子園でずっと勝てていなかった。いろんな方が応援してくださった。非常にまとまっている学校なので、なんとか喜んでもらいたいと思っていた。
<熊本は大雨で影響が出ている>
試合前は心配で、いろんな地域(の状況)を調べていました。だからこそ余計に、勝って、なんとか声を届けられたらという気持ちはありました。
あまり偉そうなことは言えないですけど、一つ一つ、頑張っている姿を届けられたらなと思います。
8月13日・2回戦
○京都国際6―3健大高崎(群馬)●
前回大会覇者の京都国際が、強力投手陣を擁する昨春のセンバツ王者・健大高崎に勝利した。
京都国際・小牧憲継監督
<前回大会で優勝した時と比べて、今年のチームの強みは>
ビッグネームのチーム、強い相手に向かっていけなかった選手たちでした。それが、夏に向けて「このままでいいのか」と、選手同士がミーティングを重ねてきました。
ようやくチームが一つにまとまってきて、京都大会の初戦から決勝戦までは毎日、成長しています。(京都大会の)決勝戦から今日の(甲子園の)初戦までも成長しています。
組み合わせが決まった段階では、健大高崎さんに正直、勝ち目はないのかなと思いました。ただ、相手が決まってから、もっと気持ちが入って、どんどん、どんどんうまくなってきた。
「勝負できるかな」っていうところまでは、前日の時点で思っていました。伸び幅、成長度合いで言うと、今年の方が上かなと思いますね。
8月19日・準々決勝
○県岐阜商8―7横浜(神奈川)●
県岐阜商が延長十一回タイブレークの末にセンバツ王者・横浜に競り勝った。
県岐阜商・藤井潤作監督
何回もサヨナラのチャンスがあり、最後の1点が遠かったです。でも、本当に楽しく、最高の時間を過ごさせてもらいました。感動しました。
サヨナラの適時打を放った4番の坂口(路歩=ろあ)は、あのような(緊迫する)場面を楽しめる打者です。打席に向かう前に「任せたよ」と伝えました。バットの芯に当て、4番の仕事をしてくれました。
<九回の好機。相手が内野に5人の野手を配置し、スクイズを試みたが、決められなかった>
攻撃しているのに、攻められているような感覚でした。いろんなフォーメーションがあり、さすが全国レベルのチームだと思いました。
これまで練習試合も含めて「内野5人シフト」と相対したことはありません。うちはあまりバントはしないので、十回のチャンスに同じシフトを敷いてきた時は、打っていこうと切り替えました。
<春のセンバツ王者に勝った>
100回やったら99回は負けると思います。残りの1回が甲子園で出ました。
3年生が掲げた「底抜けに明るく、最強になろう」というテーマの通り、選手たちはどんなことが起きても「想定内」と言い合って明るく戦ってくれました。
うちは歴史の長い県立高です。大きな応援もパフォーマンスを引き上げてくれました。
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