時に厳しく、時に優しく選手たちの成長を見守ってきたからこそ、あふれる思いがある。
第107回全国高校野球選手権大会で、各代表校の監督たちは試合後のインタビューで思いの丈を語る。
敗れた時、どんな思いを抱いたのか。紡がれた言葉を振り返る。(勝者編と敗者編の2部に分けて紹介します)【構成・村上正】
8月7日・1回戦
○津田学園(三重)5―4叡明(埼玉)●
叡明・中村要監督
津田学園さんの攻撃で何本もヒットを打たれながらも、しのいでしのいでっていうところで、良いゲームだったと思います。
<選手のほとんどが地元出身>
本当に誇りに思います。(声を詰まらせ)ここまで……連れてきてくれて本当にありがとうって伝えたいですね。
もう、ほぼオール埼玉で。それでもこれだけ頑張れるって。そういったところは見ていただけたかなと思います。(ベンチ入りで唯一の東京出身の選手も)川を渡ればすぐ(埼玉)。ほぼ埼玉です。
勝たせてあげられなかったんで。喜んではいられないですけど。でも、この大観衆の中で、憧れの甲子園で、夢の舞台で。そこに立ち会わせてもらったことは本当にありがたいし、僕の脳裏にあの(照明の)蛍光は焼き付いて、いつまでも忘れないと思います。
甲子園でまずは1勝したいっていう気持ちは変わりませんけど、これ、高校野球なので。この野球を通じて、いろんな成長を。それをさせるのが我々監督というよりも教員の仕事だと思っています。勝ちたいけど、それ以上に大事なものがあると思っていますから。今日はそういった意味ではね、彼らのこの先の人生、糧にしてもらいたいなと思います。
8月11日・2回戦
○日大三(西東京)3―2豊橋中央(愛知)●
豊橋中央は春夏通じての初出場で初勝利とはならなかった。エース右腕・高橋大喜地投手(3年)が強打の日大三打線を相手に3点を奪われるも、最後まで投げきった。
豊橋中央・萩本将光監督
<決勝点は本塁打だった>
しまったと(思った)。(左翼方向へ強く吹いた)風についても(選手に)言っていた。(左翼席への打球は)伸びるので、(右打者の)内は気をつけろよと、細かく伝えてあげればよかった。
一球の怖さを知った試合だった。
<高橋投手に今後、期待するのは>
彼は(169センチで)背が低い。大学に行って頑張るので、小さくてもプロに行けるというのを見せてほしい。小さい子どもたちの夢になると思う。
8月15日・2回戦
○西日本短大付(福岡)2―1聖隷クリストファー(静岡)●
春夏通じて初出場の聖隷クリストファーは9日の1回戦で明秀日立(茨城)に勝って初勝利。1回戦に続き、高部陸投手(2年)が完投したが、3回戦進出はならなかった。
聖隷クリストファー・上村敏正監督
<高部投手の良いところは>
性格が明るいですね。普通の子はピンチやチャンスになると困った顔をするんですけど、高部はその前の段階でそうなっているんですよね。みんながのほほんとしている(試合の)前の日にも、彼は猛烈に高ぶって緊張しているタイプです。そこから試合に入ってしまえばスイッチが入るんですよね。
<春夏通じて初の甲子園出場>
まだまだ本当の力をつけていかないと。(これまでの)目標は甲子園に出ることだったと思うんですよね。そうじゃなくて甲子園で戦うチームにならないと、本物の力にはならないんだと思います。
甲子園に来られないでそれを言っても机上の空論で、いくら私が「甲子園がね……」と言ったところで通じない。(今大会が)大きな経験にはなりました。
<過去に「高校野球が嫌いになった」と発言したこともあった>
今でも嫌いですよ(笑い)。昔はこういう勝負のピリピリしたところは好きでしたけど、このごろはもういいや、つらいなって思いますね。これは本心です。
でも昔から嫌だな、と思って試合をやっていても、終わってみるとまたすぐにやりたくなってしまうんですよね。
8月17日・3回戦
○沖縄尚学5―3仙台育英(宮城)●
仙台育英は延長十一回タイブレークの末に競り負け、準優勝した前々回大会以来の8強進出はならなかった。
仙台育英・須江航監督
<先発の吉川陽大(あきひろ)投手が最後まで投げきった>
吉川はこの1年間、球数や健康状態を細かく管理して、万全の状態で投げました。もちろん継投も考えたが、天気で例えるなら、吉川は全く曇り空にならなかった。
皆さんも同じ感覚だったと思いますが、「吉川君と(沖縄尚学の)末吉(良丞(りょうすけ))君の空間」になっていた。誰もそこには立ち入ることはできないかなと思いました。
吉川は、本当は昨年も夏の大会で投げるはずが、5、6月から痩せて、どんどん調子が落ちていった。「夏に弱い吉川」みたいな感じだったのが、たった365日で成長するって、高校生は素晴らしいですね。
<最も暑い時間帯の試合を避ける2部制についてはどう思うか>
2部制、いいじゃないですか。夜遅いと、いろんな批判の声もあるのは百も承知なんですけど。
そんな軽いこと言うなって言われたら怒られちゃうかもしれないですけど、「人生最高の夜更かし」ですよ。夏休みの思い出で、友達と夜更かししたんだって、最高の思い出じゃないですか。全部肯定的に考えています。
8月19日・準々決勝
○日大三(西東京)5―3関東一(東東京)●
前回大会準優勝の関東一は「3番・投手」で先発出場した坂本慎太郎投手(3年)が投打でチームを引っ張った。この日は投手としては6回5失点(自責点4)。打者としては五回に適時打を放ったが、九回2死から中飛に倒れ、昨夏の甲子園大会決勝に続いて最後の打者となった。
関東一・米沢貴光監督
坂本一人にたくさんのことを背負わせてしまって。(九回2死の打席)彼が打ってくれればという思いもあったが、(昨夏の決勝に続いて)今年も彼で終わったことも意味があるのかなと。帰ったら考えたいと思います。
彼が通ってきた道の経験値を僕らはたくさんもらって、たくさんのプラスがあった。いろいろ背負ってきてくれたものを、次のステージでも出してくれればと思います。
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