東京の“ひとり出版社”の映画「ジュンについて」 高知で上映

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トークイベントで映画について語る田野隆太郎監督(右)と島田潤一郎さん=高知市で2025年8月16日午後4時41分、小林理撮影 拡大
トークイベントで映画について語る田野隆太郎監督(右)と島田潤一郎さん=高知市で2025年8月16日午後4時41分、小林理撮影

 高知県室戸市生まれで、東京で“ひとり出版社”の夏葉社を運営している島田潤一郎さん(49)が、本をつくり、読み手に届ける様子を追ったドキュメンタリー映画「ジュンについて」(2024年)が高知市で上映される。

 東京で育った島田さんは、夏休みは叔父と叔母の住む室戸市で過ごし、同年代のいとこと遊んでいた。だが、いとこは若くして亡くなり、「つらい気持ちでいる叔父と叔母のために」と詩集の出版を決意。出版や書店での経験はなかったが、2009年に夏葉社を創設した。

 著作で島田さんの生き方を知った田野隆太郎監督(55)が、21年9月から23年5月まで580日間、島田さんの活動を記録した。事務所で本を整理したり、取引先の書店を1軒ずつ訪れて近く出版する本の内容を説明したり、自ら執筆する本の取材をしたりする姿が、ナレーションなしに映し出される。

 島田さんが出す本はベストセラーを目指したものではない。5年、10年かけて少しずつ売れ、必要な人に届く本作りだ。全編を通じて、本を丹念につくり、ゆっくりと広めていく姿が描かれている。

 16日に高知市のあたご劇場で開かれた初上映会には100人以上が詰めかけた。上映後のトークイベントで、プロデュースから配給まですべてを1人で手がける田野監督は「撮影していて発見があった。島田さんが請求書を手書きで書いていることや、書店主との何ということもない会話とか。撮影しているつもりで、自分を撮っているような気持ちになった」と話した。また、島田さんは「叔父、叔母を慰めようと思って出版社を作ったが、本当は自分が力をもらっていた。いとこを亡くした悲しみは消えることはないが、新たな始まりのきっかけになった気がする」と話していた。

 映画は、22日から9月21日まで、毎週金曜、日曜の午後7時から、高知市越前町2のカフェ「十月」に設けられる仮設シアターで上映される。観覧料1600円。【小林理】

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