原子力規制委員会は30日、北海道電力が2027年中の再稼働を目指す泊原発3号機(北海道泊村、出力91・2万キロワット)について、安全対策が国の新規制基準を満たしているとする審査書を正式に認めた。再稼働には地元自治体の同意が必要で、今後は北海道電が北海道と泊村以外の周辺自治体にも同意を求めるのかが焦点だ。
泊原発は12年5月までに1~3号機が定期検査に入り、運転を停止した。翌年7月、北海道電は全基の再稼働に向けて審査を申請し、国内で最も新しい3号機を優先するよう求めた。規制委は約12年間に及ぶ審査を経て今年4月、審査書案を了承していた。
規制委によると、審査書案に対する意見公募には5月末までに143件が寄せられたが、審査書案の修正が必要になるような指摘は無かった。このため、規制委は30日の定例会で審査書の内容に問題は無いと判断した。これで東日本大震災後に審査を通ったのは11原発の計18基となった。
北海道電は当初、耐震設計の基になる地震の最大の揺れ「基準地震動」を550ガル(ガルは加速度の単位)、最大の津波の高さを7・3メートルとして申請。しかし度重なる見直しを経て、最終的にはそれぞれ693ガルと17・8メートルに引き上げた。北海道電は27年3月までの完成を目指して高さが海抜19メートル、長さが約1200メートルの防潮堤を建設中で、同年中に再稼働させたい考えだ。
審査終盤には、北海道電が原発構内に停泊させる予定だった核燃料輸送船について、規制委が津波に流されて防潮堤と衝突し、破損する恐れを指摘した。そのため北海道電は今年6月、原発の約1キロ北の敷地外に新港を建設し、約1・8キロの専用道路で原発と結ぶ新たな計画を発表した。
再稼働には地元同意が必要だが、北海道電は同意を得る自治体の範囲を示していない。鈴木直道知事は再稼働への賛否を明確にしていない。【小川祐希、木許はるみ】
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