第107回全国高校野球選手権大会第15日の23日、日大三(西東京)は決勝で沖縄尚学(沖縄)に1―3で惜敗し、2011年以来14年ぶり3回目の優勝はならなかった。主将の本間律輝(3年)の適時打で先制したが、追加点が遠かった。都勢は昨年の関東一(東東京)に続き2年連続の準優勝。熱戦を終えた両校の選手は健闘をたたえ合い、スタンドからは声援と大きな拍手が送られた。【洪玟香、栗林創造、砂押健太】
「あと一歩のところで…」
日大三は一回、先頭打者の松永海斗(3年)が内野安打を放つと、2番の松岡翼(同)の送りバントで1死二塁とした。ここで本間が右中間適時二塁打を放ち、先制。本間はこの試合4打数3安打と気を吐いた。
二回に追いつかれ、同点で迎えた四回、竹中秀明(同)と桜井春輝(同)の安打などで2死満塁の好機を迎える。打席が回ってきた松永は「みんなが必死につないでくれたチャンス。絶対に還してやろう」と臨んだが、遊ゴロに。「気持ちと体が空回りしてしまった。1番打者として役割を果たしたかった」と後悔を口にした。
その後、打線は沖縄尚学の2投手を攻めあぐね、五回以降は1安打に抑えられた。
日大三は谷津輝、山口凌我、近藤優樹の3年生の3投手が継投した。エース近藤は同点の六回無死一塁の場面でマウンドに。「どんな場面でも抑えてやる」という思いで打者2人を打ち取ったが、盗塁で2死二塁となり、4番打者に左前適時打を許して勝ち越された。「谷津と山口がよく投げてくれたのに……。2人に申し訳ない」と語った。
2点を追う最終回。1死一、三塁で代打に立った永野翔成(3年)が初球を捉えると、打球は遊撃手の正面に飛んだ。一塁にヘッドスライディングをしたが、併殺でゲームセット。「あと一歩のところでヒットにできず、悔しく、みんなに申し訳なくて泣いてしまった」と振り返った。
沖縄尚学の校歌の後、日大三の選手たちは最上段まで埋まった一塁側アルプス席だけでなく、沖縄尚学の応援団が詰めかけた三塁側アルプス席に向かって一礼。さらにバックネット裏にも深々と頭を下げた。この行動に甲子園全体が拍手に包まれた。
「悔しい、でも…」 母校講堂で応援
東京都町田市にある日大三高の講堂には生徒、保護者、地域住民ら約300人が集まり、スクリーンに映し出された試合を観戦。選手の全力のプレーに歓声が沸いた。試合が終了すると、奮闘をたたえる大きな拍手に包まれた。
バレーボール部に所属する三上大稀さん(2年)は「負けたのは悔しい。でも粘り強く戦ってくれた」と振り返った。
地域の中学生の野球チーム「町田藤の台ベースボール」のメンバー約40人も応援に参加した。コーチの近藤隆裕さん(47)は「最後まで諦めない選手たちの姿勢が素晴らしかった」。今秋から主将になる渡辺真優さん(13)は「日大三高のような強いチームを目指したい」と語った。【鮎川耕史】
代々継承「デカメガホン」
日大三のアルプス席では、巨大なメガホンを手に応援団が声を枯らせた。代々受け継がれている「デカメガホン」で、団長の山端大輝さん(3年)のものには「ガッツ! 気合! 根性!」と書かれており、「(筒の部分が)大きい分、声がよく響く。最後は気持ちなので、その部分で後押ししたい」と意気込んだ。日大三野球部OBの父和之さんの背中を追って野球部に入部した山端さん。「決勝はチームにとっても僕にとっても集大成の舞台。甲子園に連れてきてくれ、ありがとうと言いたい」と仲間への感謝を胸に熱い声援を送った。
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