神戸市中央区のマンションで住人の会社員女性が刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された谷本将志(まさし)容疑者(35)=東京都新宿区=が事件直前、少なくとも10分以上にわたり被害女性を尾行していたことが捜査関係者への取材で明らかになった。容疑者は以前に神戸市に住み、事件時は仕事の休暇中で同市にいたことも判明。現場周辺にも地縁があったとみられ、駅周辺から被害女性を執拗(しつよう)につける様子が防犯カメラに記録されていた。兵庫県警は容疑者が被害女性を狙った経緯を詳しく調べる。
谷本容疑者は20日午後7時20分ごろに現場マンションのエレベーター内で、住人の保険会社社員、片山恵さん(24)の胸などをナイフで刺して殺害した疑いが持たれている。死因は失血死だった。
容疑について「殺意を持っていたかは分かりませんが、ナイフで腹部のあたりを1回か2回くらい刺したことに間違いありません」と一部を否認しているという。片山さんの上半身には複数の刺し傷があり、一部は肺に達していた。
捜査関係者によると、片山さんは事件当日、午後6時半ごろに神戸市内の職場を退勤。郵便局や買い物に寄って自宅マンションに帰宅した。県警が帰宅経路の防犯カメラを調べたところ、片山さんの自宅の北西約600メートルにある阪神神戸三宮駅付近から10分以上にわたり、容疑者とみられる人物が片山さんの後をつける様子が記録されていた。片山さんはこの人物に気づいていない様子だったという。
容疑者は片山さんがオートロック式のドアを開けてマンションに入った際、扉が閉まらぬうちに建物内に侵入。一緒にエレベーターに乗った後に事件に及んだとされる。
関係者によると、容疑者は以前に神戸市で暮らしており、市内の建設会社で10年ほど働いていたという。事件時は会社のお盆休みだった。県警によると、片山さんとの接点は把握されておらず、片山さん側から付きまといなどの相談もなかった。
一方、容疑者が事件直後、東京方面に新幹線で移動したとみられることも県警への取材で分かった。容疑者に酷似した人物が北に約2キロのJR新神戸駅で、20日午後8時台の東京方面に向かう新幹線に乗車していたことが、防犯カメラの映像で確認されたという。
容疑者は22日、東京都内のJR奥多摩駅から東に約5キロの路上で、1人で歩いていたところを警視庁の捜査員に発見され身柄を確保された。当時、暴れて抵抗する様子を見せたという。
片山さんの遺族は代理人弁護士を通じ「(容疑者が)逮捕されたと聞き、ひとまず安堵(あんど)しています。家族一同、悲しみに暮れ、混乱した状態が続いていますが、せめて安らかに送り出したいとの思いでいます。どうか、私どもの心情にご配慮いただき、静かに見守ってください」とのコメントを出した。【柴山雄太、木山友里亜、前田優菜、林みづき、露木陽介】
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