警視庁と東京地検の謝罪に遺族「許すことはできない」 大川原冤罪

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大川原化工機の冤罪(えんざい)事件について警視庁と検察庁から謝罪を受けた後、相嶋静夫さんの遺影とともに記者会見する相嶋さんの長男(左)と次男=横浜市内の霊園で2025年8月25日午後0時37分、和田大典撮影 拡大
大川原化工機の冤罪(えんざい)事件について警視庁と検察庁から謝罪を受けた後、相嶋静夫さんの遺影とともに記者会見する相嶋さんの長男(左)と次男=横浜市内の霊園で2025年8月25日午後0時37分、和田大典撮影

 警視庁公安部による冤罪(えんざい)「大川原化工機事件」で、大川原化工機元顧問の相嶋静夫さん(享年72)の遺族は25日、警視庁や東京地検の幹部らの謝罪を受けた。ただ、遺族は「謝罪は受け入れたが、許したわけではない」と強調。冤罪の検証結果や、捜査に携わった関係者への処分が不十分だとして、再調査や処分の再考を強く求めた。

 「違法な捜査を行った」「違法な公訴提起をした」

 この日、警視庁の鎌田徹郎副総監や東京地検の市川宏次席検事の口からは、捜査や起訴が「違法だった」と認める言葉が初めて出た。鎌田副総監らは6月にも大川原化工機の本社を訪れて謝罪したが、捜査が違法かどうかを曖昧にしたまま「捜査で負担をかけた」と述べるにとどまっていた。

 相嶋さんの長男(51)はその場で「踏み込んだ内容」と一定の評価をした。一方で、警視庁と最高検が8月7日に公表した検証結果がいずれも内部調査だった点に不信感を示し、「受け入れることはできない」と第三者による再調査を求めた。

 遺族が調査のやり直しを望むのは「立件に至った具体的な事実や深い原因究明がなされていない」との思いがあるからだ。次男(48)も「警視庁の検証は不十分。都合の悪い事実に触れていない」と訴えた。

警視庁の鎌田徹郎副総監、最高検の小池隆公安部長、東京地検の市川宏次席検事から謝罪を受け、相嶋静夫さんの言葉をパネルで伝える遺族=横浜市内の霊園で2025年8月25日午前10時57分、和田大典撮影 拡大
警視庁の鎌田徹郎副総監、最高検の小池隆公安部長、東京地検の市川宏次席検事から謝罪を受け、相嶋静夫さんの言葉をパネルで伝える遺族=横浜市内の霊園で2025年8月25日午前10時57分、和田大典撮影

 ぬれぎぬで勾留された相嶋さんは、胃がんが分かってから4回の保釈請求をしたのに退けられるなどし、満足な治療を受けられずにこの世を去った。相嶋さんの妻(77)は「謝罪を受け入れますが、決して許すことはできない」と語気を強めた。

 関係者の処分が最も重くて減給だったことにも、遺族の反発は強い。捜査関係者によると、捜査に積極的な捜査員たちは昇任したのに対し、「事件は捏造(ねつぞう)」などと裁判で捜査を批判した警部補3人の階級はそのままだ。

 長男は鎌田副総監に「昇任した捜査員はすべて降任させるべきだ」と主張。さらに市川次席検事に対し、起訴した塚部貴子検事と、胃がん判明後も保釈請求に反対意見を出し続けた加藤和宏検事の名を挙げ、「父を死に至らしめた2人は辞任、辞職されることが相当だ」と思いをぶつけた。

 遺族は謝罪を受けた後、報道陣非公開で鎌田副総監らと面談した際にも再調査と処分の再考を求めたが、捜査当局から具体的な回答はなかったという。最高検の山元裕史次長検事は25日、報道陣に対し、再検証や処分の見直しを「現時点では考えていない」と述べた。

 謝罪を受けた後の記者会見で長男は「(捜査当局は)収束を図ろうとしているが、父の命を奪った責任はどこにあるのか、なぜ父は死ななければいけなかったのかを明らかにしてほしい。これで終わりではない」と語った。【遠藤浩二、北村秀穂】

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