/455 上田岳弘 倉田悟・絵

Date: Category:カルチャー Views:1 Comment:0

 僕自身は大人しく聞いているとは約束してなどいない。けれど、なんとなく彼人(かのひと)の約束の効力を破ることはできなかった。黙っている内に、様々な疑問が頭の中に渦巻いた。特に僕と全く同じ姿形の「鳥」が、自分の経験を語る様子はとても奇異に映った。鳥こそが僕の本体で、黙って聞いているしかない僕は彼の影のようなものにしかすぎないように思えてくる。

 日本のシステムに乗ることに長(た)けた自分は総合商社の職を得て、日本自体がゆっくり沈んでいくのだとしても、自分と自分の家族くらいは困らないだけの糧を得ることはそう難しくはないだろう。無難にしていれば、イージーに生きていけると高を括(くく)り、僕は誰がどうみてもうまくやっていた。疑問を感じる必要もないほどに。でも、そんな風に生活とその集積としての人生を送る内に、だんだんと無視し得ぬほどに違和感がふ…

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