/161 辻村深月 画 佐伯佳美

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 その笑みを見て――、あ、と思った。

 オレ、ここ、好きかも、と唐突に思った。割れ窓理論というのは初めて聞く単語だったけれど、ああ、確かにそういうことってあるな、と凌生の耳と頭に自然と言葉が馴染(なじ)んでいく。

 部屋がきれいだ、と山本に言われたことを、一緒に思い出していた。

 誰も凌生の仕事ぶりや性格なんて、見ていないと思っていたのに。見ていたとしても、キレやすく、態度が悪い点ばかりを指摘されるものと覚悟していたのに。

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