
神戸市中央区のマンションで住人の会社員、片山恵さん(24)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された谷本将志容疑者(35)=東京都新宿区=が、片山さんの職場周辺を事件の前日からうろついていたとみられることが捜査関係者への取材で明らかになった。当日も待ち伏せするような様子が周辺の防犯カメラに記録されていた。
容疑者は事件約1カ月前から神戸行きを計画していたことも判明。片山さんについて「全く知らない人だった」と供述しており、兵庫県警は神戸を訪れた目的や片山さんを狙った経緯を調べている。
捜査関係者によると、神戸市中央区にある片山さんの職場近くに設置された複数の防犯カメラには、事件前日の19日夕、容疑者に酷似した人物がうろつく様子が映っていた。
事件が起きた20日、片山さんは午後6時半ごろに退勤。容疑者とみられる人物は片山さんの会社が入るビル前の路上で、人の出入りをうかがうそぶりを見せていた。別の女性2人と一緒にビルを出た片山さんとみられる女性が1人になって歩き出した後、数メートル離れてついていく姿も記録されていた。
片山さんは会社を出た後に郵便局に立ち寄ったり買い物をしたりしながら、電車を乗り継いで自宅マンションに帰宅。この間、容疑者は約4キロの道のりを50分近くにわたって尾行していたとされる。
マンション玄関で片山さんがオートロック式ドアを開けた後、容疑者は扉が閉まらないうちに建物に侵入。一緒に乗り込んだエレベーター内で午後7時20分ごろ、片山さんの胸部をナイフで複数回刺して殺害した疑いが持たれている。
容疑者は職場のお盆休暇を取って17日に神戸に入り、この日のうちに片山さんの職場近くのホテルに宿泊していた。関係者によると、事件約1カ月前の7月26日、東京方面からJR新神戸駅までの往復の新幹線チケットを購入していたという。
容疑者は過去に神戸市内に住んでいたことがあり、片山さんの職場周辺に土地勘があったとみられる。県警は休暇の目的や神戸滞在中の行動について捜査している。
また、容疑者が事件後にタクシーでJR新神戸駅に移動したとみられることも分かった。事件発生から約30分後の20日午後7時50分ごろ、容疑者が滞在していたホテル近くで、似た人物がタクシーに乗るのを防犯カメラの捜査などで確認した。県警は人目を避けて逃亡するためとみている。
谷本容疑者は新神戸駅から午後8時台の新幹線で東京方面に移動。22日に東京都奥多摩町内で身柄を確保された。「殺意を持っていたかは分からないが、腹部の辺りを1回か2回くらい刺した」と容疑を一部否認している。【前田優菜、稲生陽、柴山雄太】
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