サッカー・J1は大混戦のまま終盤を迎える。史上2チーム目のリーグ3連覇を目指すヴィッセル神戸は今が正念場だ。国内外の大会を同時に戦う過密日程が待ち受ける中、選手は「自信」を強調する一方で、昨季までとは違う懸念も垣間見える。
カレンダーをめくると、ぞっとする日程が詰まっている。
神戸は夏の中断期間が明けた8月6日からリーグ最終戦の12月6日まで、最大28試合が予定されている。
リーグ戦に加え、天皇杯全日本選手権、YBCルヴァン・カップのタイトル獲得の可能性が残り、9月17日からアジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)の試合がスタートする。順調に進めば4カ月間、ほぼ週2試合のペースで試合が続くことになる。
8月23日のアウェー、セレッソ大阪戦の後、神戸の主将・山川哲史はこう語った。
「間違いなく、神戸としての経験がどんどん積み重なっている。少しずつメンバーは代わりながらだが、残っている選手もたくさんいる。むしろヴィッセルは連戦に強いというイメージが僕の中であるので。自分たちも良いリズムでやれる」
これまでリーグ戦全試合に先発出場している守備の要は20日のアウェー、サンフレッチェ広島戦で前半45分のみで途中交代した。足にトラブルがあったのだが、その後の練習で吉田孝行監督に「行けます」と伝えた。セ大阪戦はフル出場し、チームは1―1で引き分けた。
セ大阪戦から中3日で迎えた、27日のアウェーでの天皇杯準々決勝、SC相模原戦は120分間を戦って同点のまま、PK戦で辛くも勝利。30日はホームでのリーグ戦で、横浜F・マリノス戦が控えている。
山川が強調したように、リーグ連覇した昨季の「成功体験」はチームにとって大きな自信となっているだろう。同じようにアジアの戦いと並行した昨季は、リーグ戦で8月下旬から10月上旬にかけて、クラブ記録に並ぶ6連勝をマークした。
長距離移動も強いられる中で、吉田監督による「11人総入れ替え」のような大胆なターンオーバー(大幅なメンバー入れ替え)も的中し、天皇杯も制した。
一方、チーム状況に目を向ければ拭いきれない不安要素が浮かび上がる。主力のコンディションの問題だ。
昨季のリーグ最優秀選手の武藤嘉紀は今年5月に腰を手術し、長期離脱を強いられた。8月に復帰したものの、起用には慎重にならざるを得ない。大迫勇也も今季は毎試合出場とはいかず、現時点で21試合出場5得点にとどまっている。
23日のセ大阪戦後、相手の香川真司は大迫、武藤との会話を明かしていた。
「やっぱり試合に出続けて……、この(36歳という)年齢になった時に、一回休んだりすると(コンディションを)上げるのが難しいなと。きょうでいう武藤や大迫とそういう話もしたんですけど。いくら練習をハードに積んでも本番のこの雰囲気の試合でやり切らないと上がっていかない」
35歳の大迫、33歳の武藤をはじめ、チームを支えてきた選手たちは30代を過ぎた。体調面で一層、気を配ることも増えているはずだ。
武藤らが離脱中に踏ん張ったのが山川ら中堅だった。つまずいた序盤からの巻き返しは彼らの活躍が大きかった。
しかし、ここに来て攻撃陣をけん引していた佐々木大樹が16日の横浜FC戦で負傷交代し、戦線を離脱。他にも山川ら出場時間が長く負担が大きい選手も多く、猛暑が続く中での疲労の蓄積も見過ごせない。
リーグ戦は全38節のうち28試合を終え、5位の神戸は首位京都サンガFCをわずか勝ち点1差で追う。セ大阪戦後、吉田監督は「残り10試合、全て勝つつもりで一試合、一試合臨んでいきたい」と語っていた。
「何が起こるか分からないからこそ面白い。細部にこだわる」とは武藤。一層険しくなった頂点への道を一歩ずつ登っていく。【生野貴紀】
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