札幌市博物館活動センターなどの研究チームが、札幌市南区小金湯で2008年に発見されたセミクジラ科の化石は新属新種だったことを突き止めた。和名は「サッポロクジラ」で、8月に研究論文が海外の学術誌に掲載された。
山吹色に色づいた山に囲まれた河原を歩いていると、足元の岩盤から浮き出した棒状の石が目に留まった。顔を近づけてみると、すぐに医師の直感が告げた。「骨だ!」
サッポロクジラの化石は08年10月19日の朝、新札幌豊和会病院(札幌市厚別区)の森和久理事長(66)が南区小金湯の豊平川の河原で見つけた。
定山渓でのラグビーの試合に向かう途中、紅葉がキレイで写真を撮ろうと偶然、車を止めた場所だった。
医学生のころに人骨とにらめっこした「骨学実習のスケッチ」の経験が生きた。石は断面が海綿質の構造になっており、片面がくぼんでいて肋骨(ろっこつ)の特徴を示していた。
ただ、とんでもなく大きい……。長さは30センチほど、太さも5センチほどあった。「恐竜の化石に違いない!」と興奮を抑えられず、紅葉でなく、一心不乱に石を撮影した。
ラグビーの試合後、石を採取。休館日をまたいで市博物館活動センターに持ち込んだ。「豊平川で大型動物の化石を見つけました」と言う森さんをいぶかしげに見たのは、研究チームの一人、古沢仁学芸員(故人)だった。
少しすると、クジラの骨と判明。付近で世界最古の大型海牛「サッポロカイギュウ」の化石が見つかり、学芸員も足を運んだことのある地点だったと古沢さんは明かした。
発掘は4年に及び、大量の骨が見つかった。周りの岩ごと掘り起こすため、骨だけを取り出すクリーニングの作業に10年を要した。
河原で石を見つけてから17年。ついに、名前がついた。森理事長はサッポロクジラという和名に親しみを感じているという。
「すごくよい名前だと思う。いろいろな人に知ってほしい。太古の札幌、小金湯が海の底で、クジラが悠々と泳いでいたなんて、不思議ですよね」と目を細めた。【水戸健一】
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