世界文化遺産候補「飛鳥・藤原の宮都(飛鳥・藤原)」(奈良県明日香村、橿原、桜井両市)の登録が2026年7月の世界遺産委員会で審議されることをにらみ、橿原市は縮尺1000分の1の藤原京模型を展示する市藤原京資料室(縄手町)を整備する。初の都城・藤原京は、当時の唐の都・長安(現・中国西安市)とは異なる都市計画で建設されており、模型は東アジアの中での古代日本の独自性を物語る資料。整備を機に再注目されそうだ。
模型は市が30年前、奈良文化財研究所の監修で制作し、幅7メートル、奥行き6メートル。市が藤原京遷都1300年を記念して1995年に市内で開催した博覧会「ロマントピア藤原京」の展示の目玉だった。
模型には二つの注目点がある。一つは京域が大和三山(香具山、畝傍山、耳成山)外側に広がる「大藤原京説」に基づく模型である点。戦後の一時期「三山の内側の小規模な都」とする「小藤原京説」が通説だったが、制作時の95年には有力になっていた大藤原京説を採用した。現在、藤原京は5・3キロ四方の正方形で、平城京(現・奈良市)をしのぐ古代最大の都だったことが明確になっている。
もう一つは、京の中心に宮がある「中央宮闕(きゅうけつ)型都城」が模型で表現されている点。唐の長安は宮を京北端に置く「北闕(ほっけつ)型」で造られており、藤原京が単なる中国の模倣でなかったことを物語る。中央宮闕型は中国の古典「周礼(しゅらい)」に記載された唐代より古い都城の形態。藤原京を計画した天武天皇とそれを引き継いだ妻の持統天皇の、理想の都づくりへの情熱を模型から知ることができる。
市藤原京資料室は世界遺産登録推進運動が始まった2006年10月、市の別施設で展示していた模型を移して開設。「飛鳥・藤原」構成資産・藤原宮跡の指定エリア内にあるJAならけん橿原東部経済センター2階を間借りした施設で、宮跡を訪れる観光客の休憩室の役割も果たす。24年度は約1万3000人の利用があったが、専用の建物でないため、橿原市民でも存在を知らない人が多い。
今回の整備は室内照明をLEDに変え、模型の案内機能も修理し、老朽化した資料室を再生する。ボタンを押すと藤原京模型の該当建物にライトが付く機能が最近故障していた。市は、資料室整備費430万円を盛り込んだ9月補正予算案を9月2日に開会する市議会定例会に提案する。
亀田忠彦市長は「将来的には国や県と協議して本格的な案内施設を設ける必要があるが、来夏の登録までの緊急対策として資料室の充実を図る」としている。市資料室は午前9時~午後5時。祝日を除く月曜休室。入室無料。市世界遺産登録推進課(0744・21・1114)。
来夏、韓国で審議
政府が2025年1月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦した世界文化遺産候補「飛鳥・藤原の宮都」は26年7月19~29日、韓国・釜山で開かれる第48回世界遺産委員会で審議される。【皆木成実】
Comments