平野啓一郎さん(作家) 今の世で正気保つため 『文学は何の役に立つのか?』刊行

平野啓一郎さん(作家) 今の世で正気保つため 『文学は何の役に立つのか?』刊行

 文学は役に立つのか――。  繰り返し問われてきた問いに、作家の平野啓一郎さんが答えている。  新刊エッセー集『文学は何の役に立つのか?』(岩波書店)は、その言葉そのものを冠した刺激的なタイトル。過去7年の講演や寄稿などをまとめた。文学論や芸術論、追悼文と内容は多岐にわたる。  冒頭の講演録で、平野さんはこの大きな問いに「今の世の中...
英ダガー賞を受賞して 多様に読まれる作品に喜び=王谷晶(作家)

英ダガー賞を受賞して 多様に読まれる作品に喜び=王谷晶(作家)

 だいぶ前に亡くなった母方の祖父はたいそうな趣味人で、特にミステリー小説とクラシック音楽が大好きな人だった。祖父母宅の2階は壁という壁が本棚で埋まっており、そこに国内外の文庫本とハヤカワ・ミステリがぎっちりと詰まっていた。その祖父から小学生のときに『シャーロック・ホームズ大全』(鮎川信夫著、講談社刊)をプレゼントしてもらったのをきっ...
日本画研究者が紙や技法再現 「原爆の図」模写で後世へ

日本画研究者が紙や技法再現 「原爆の図」模写で後世へ

 画家の故丸木位里・俊夫妻が被爆の惨状を描いた連作絵画「原爆の図」の模写に、広島市立大で日本画を研究している非常勤講師、古賀くららさん(42)が取り組んでいる。世界的に著名な作品だが、使われた紙や画材、技法に関する資料は乏しく作業は手探りだ。ただの複製でなく、夫妻のまなざしも再現したい――。惨禍を後世に伝える力になると信じている。...
/155 辻村深月 画 佐伯佳美

/155 辻村深月 画 佐伯佳美

 臼井が凌生に言う。 「紹介してもらった最初の職場だからって、そりゃ、ちょっと足元見られすぎ。山本さんじゃなくてもそりゃ、言いたくなるわ」 「そういうもん?」 「うん」  臼井が頷(うなず)くと、なんだかほっとした。買...
日常の隣にある不穏 国内外8作家の特別展 大阪・国立国際美術館

日常の隣にある不穏 国内外8作家の特別展 大阪・国立国際美術館

 今年は戦後80年。しかし、本当に今は「戦後」なのだろうか。新たな戦争へと向かう「戦前」ではないのか。戦争への憂慮だけでなく、自然災害や新型コロナウイルスなどの災厄、行き過ぎた情報化が生む社会の分断など、私たちの日常は不安や危機であふれている。そんな「非常」が「常」であるような現代をどう生き抜けばいいのか。国立国際美術館(大阪市北区...
伝えたいこと/中 少女たちの沖縄、現代に 「忘れてほしくない過去」描く 漫画家・今日マチ子氏

伝えたいこと/中 少女たちの沖縄、現代に 「忘れてほしくない過去」描く 漫画家・今日マチ子氏

 太平洋戦争末期の沖縄で、看護要員として動員されたひめゆり学徒隊に着想を得て描かれた漫画「cocoon(コクーン)」(2010年、秋田書店)。繰り返し舞台化されてきたが、戦後80年の節目にアニメ化され、地上波で初めて放送される。形を変えて読み継がれる理由とは。作者の今日マチ子さんに聞いた。【聞き手・椋田佳代】  ――cocoonは戦...