
肌を焦がすような強い日差しが照りつけ、強風が道路の砂を激しく吹き上げる。
米南部テキサス州スター郡のリオグランデシティーはメキシコとの「国境の街」だ。街の外れにはリオグランデ川が流れ、隣国とを隔てる。
周辺ではトランプ政権が力を入れる不法移民流入阻止を目的とした鉄製の「国境の壁」が着々と建設されていた。
「まさかこんなことになるとは想像していなかったよ」。街の中心部で電化製品などを扱う商店を営むメキシコ系のダビド・チャパさん(48)は、売り上げが表示された携帯電話の画面を記者(松井)に見せて嘆いた。トランプ政権が1月に発足して以降、店の売り上げは2~3割落ち込んだという。
スター郡の人口は約6万5000人。メキシコ出身を中心とするヒスパニック(中南米系)が97%を占め、その比率は全米の郡で最も高い。
移民に寛容な民主党の牙城だったが、昨年の大統領選ではトランプ大統領が勝利した。共和党候補がこの郡で勝つのは120年以上ぶりのことだった。
ヒスパニックの人口は近年、全米で増え続けており、米政治の行方を左右する存在だ。トランプ氏が大統領に返り咲いたのもヒスパニックの間で支持を伸ばしたことが大きい。
米メディアは選挙後、トランプ氏のヒスパニックへの浸透を「象徴する街」としてスター郡を盛んに取り上げた。第2次トランプ政権発足から半年後、その街はどうなっているのか。
「トランプが勝てば経済が一気に良くなる」。チャパさんもトランプ氏を支持した一人だ。
「バイデン前政権でのインフレ(物価上昇)は本当にひどかった。家族や友人でハリス(民主党候補)に投票した人なんていなかった」と振り返る。
だが、そんな期待はすぐにしぼんだ。なじみの客の2割程度が店に来なくなったのだ。
理由はトランプ政権の極端な不法移民対策だった。犯罪歴のある不法移民が中心だった摘発…
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