
米政治の行方も左右するヒスパニック(中南米系)住民に今、何が起きているのか。
トランプ大統領がヒスパニックの支持の取り付けに成功した「象徴」と評される南部テキサス州スター郡の選挙事情を知り尽くす共和党幹部、トニ・トレビーノ氏(68)はこう解説する。
「カトリック教徒の多いヒスパニックには社会的な価値観の面で保守的な人が少なくない。一方で、リベラルな民主党に投票するのが長年のいわば『慣習』だった。トランプ氏はヒスパニックをその慣習から解放した」
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契機は2020年
トレビーノ氏によると、スター郡で有権者の動向が大きく変わったのは民主党のバイデン前大統領が勝った2020年大統領選だ。
郡ではバイデン氏が約9100の得票で勝利したが、トランプ氏も約8200票を獲得。16年の大統領選でトランプ氏は約2200票しか得ておらず、4倍弱の票を上積みした形だ。そして昨年の大統領選では、約9400票を得て、約6800票のハリス副大統領(当時)を破った。
トレビーノ氏は、トランプ氏が票を伸ばした理由として、「1期目(17~21年)の実績が大きかった。新型コロナウイルスの流行はあったものの経済は好調な期間が長く、不法移民対策にも力を入れた」と語る。さらに、「民主党は性的少数者など特定の進歩的なグループにしかメッセージを届けられなかった」との見方を示す。
ヒスパニックの保守系啓発団体「リブレ・イニシアチブ」の地元責任者、ホルヘ・マルティネス氏も「ヒスパニックが『移民に寛容』という固定観念から前例踏襲的に民主党に投票していた時代が終わった」と断言する。
その上で、「多くのヒスパニックは共和党の強固な支持者になったわけではなく、状況に合わせて投票先を変える『スイング』する存在になった」とも指摘する。
一方で、マルティネス氏は、スター郡などテキサス州南部のヒスパニックは、トランプ政権による不法移民の取り締まりは「過剰だと見ている人が多い」との見方も…
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