松本版と山田版、どちらの「高遠遙一」が印象的?
人気ミステリーマンガ『金田一少年の事件簿』(原作:天樹征丸、金成陽三郎/作画:さとうふみや)に登場する「高遠遙一」は、シリーズ最大の宿敵にして、原作ファンの間で絶大な人気を誇るキャラクターです。
しかし意外にも実写ドラマ版での出番は少なく、これまで制作された全5作品のうち、わずか2作品にしか登場していません。そのうえどちらもオリジナルの設定が追加され、それぞれ異なる魅力を放っていました。
『金田一少年の事件簿』は、名探偵「金田一耕助」を祖父に持つ主人公「金田一 一(はじめ)」が、抜群の推理力で数々の難事件に挑むミステリー作品です。高遠は「魔術列車殺人事件」で初登場したキャラクターで、「地獄の傀儡師」の異名を持つ犯罪者として金田一の前に立ちはだかります。事件のトリックを見破られた後は、恨みを抱く人びとに完全犯罪のシナリオを書いて協力する「犯罪コーディネーター」として、たびたび物語に関わってきました。
金田一と宿命的に結びついた存在の高遠は、BOOK☆WALKER主催で『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』で主役となる犯人を選ぶ「犯人総選挙」で堂々の第1位に輝くほどファンから絶大な支持を受けています。
それほどの人気キャラクターであるにもかかわらず、実写ドラマシリーズで高遠が登場したのは、嵐の松本潤さんが2代目金田一を演じた「松本版」と、Hey! Say! JUMPの山田涼介さんが4代目を務めた「山田版」の2作品のみです。ドラマ全体の長い歴史を考えれば、登場機会は決して多くありません。
まず松本版『金田一』で高遠を演じたのは、元チェッカーズの藤井尚之さんです。原作通り、2001年春に放送されたスペシャルドラマ「魔術列車殺人事件」で初登場しました。オドオドとした態度や冴えない風貌、そして金田一にトリックを見破られた瞬間に見せる不気味な豹変ぶりなど、原作の高遠像に寄せた演出と演技が強く印象に残ります。
また同年7月より放送された連続ドラマでは、第8話「露西亜人形殺人事件」で再登場するものの、茶髪にサングラス、革ジャン姿というワイルドな風貌へと一変していました。原作の爽やかな好青年像とは大きく異なるビジュアルに、驚いた視聴者も多かったのではないでしょうか?
対して山田版『金田一』の高遠は、「地獄の傀儡師」という異名こそ同じながら、国際的に暗躍する指名手配犯というスケールの大きな設定になっていました。本作は2013年1月に「香港九龍財宝殺人事件」、2014年1月には「獄門塾殺人事件」がスペシャルドラマとして放送され、高遠が初登場した「獄門塾殺人事件」では、「香港九龍財宝殺人事件」にも関与していたことが明らかになります。
さらに続く連続ドラマシリーズでは、「金田一少年の決死行」や「薔薇十字館殺人事件」にも登場。特に「薔薇十字館殺人事件」では宿敵であるはずの金田一と一時的に手を組むという熱い展開が描かれ、松本版以上の存在感を示しました。
そんな高遠を演じたのは、俳優の成宮寛貴さんです。物腰柔らかな好青年の顔と、狂気をにじませる笑顔のギャップが原作の高遠そのもので、ネット上でも「ハマり役だった」と高く評価されています。サイコな魅力を内に秘めたその演技は、シリーズ屈指の名キャスティングといっても過言ではありません。
どちらの高遠も、原作の設定を踏襲しつつ、それぞれの作品世界にふさわしいアレンジが加えられていました。だからこそ実写ならではの存在感を放ち、多くの視聴者の記憶に残る「もうひとりの高遠遙一」となったのでしょう。
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