国の重要文化財で、現存する被爆建物では最大級となる「旧広島陸軍被服支廠(ししょう)」(広島市南区)の内部が3日、被爆80年を前に一般公開され、約70人が見学に訪れた。
約500メートルにわたってL字に連なる赤いれんが造りの建造物。爆心地から南東へ約2・7キロの住宅街にあり、爆風で変形した鉄扉が80年前の悲劇を物語る。
軍服や軍靴などを製造・保管する施設として1914年に建設された。原爆投下直後から臨時救護所となり、内部では多くの人が亡くなった。戦後は広島大の学生寮や物流会社の倉庫として使われるなど、復興を支えた。
国内最古の鉄筋コンクリート建造物としての価値もあり、2024年に国重要文化財に指定された。同年10月から耐震化などの安全対策工事が行われており、27年2月に完了予定。
広島県は将来的に、平和学習や観光の拠点として整備する方針。担当者は「鉄扉などは落下防止対策工事をして、できるだけ被爆の実相を残していきたい」と話している。【川原聖史】
Comments