社会人野球を通じて地域を盛り上げた自治体を表彰する「地域の元気 総務大臣賞」に大阪府門真市が選ばれた。都市対抗野球に出場するパナソニックの選手による野球教室や高齢者施設の訪問など市民に密着した取り組みを展開し、人口減少に苦しむ市の活性化に貢献している。
近畿から初選出となる門真市はパナソニックの企業城下町として発展してきた。隣接する大阪市のベッドタウンでもあるが、1990年以降は人口が減少傾向になり、2024年4月には「消滅可能性自治体」と指摘された。
そんな中、市は19年2月、パナソニック野球部と協定を結び、青少年の健全育成やスポーツを通じた地域活性化を進めている。同野球部は21年3月から野球教室「Panasonic Baseball Academy forスポーツ少年団」を開催。少年野球チームに年12~15回赴き、同じ選手が同じ子どもたちを継続的に教えているのが特徴だ。23年からはパナソニックベースボールスタジアム(枚方市)で小学5、6年生が参加する野球大会「パナソニック杯」を開催し、選手らが監督や審判を務めている。
野球指導に加えて、選手が市内の小学校の教壇に立ち、夢を持って生きることの大切さを児童に伝える特別授業も開催している。体育の授業に参加したり、一緒に給食を食べたりして親交を深めてきた。
また、両者が連携して市のPR動画「門真Runner」も制作した。地元の伝統野菜「門真れんこん」をバトンに見立てて市内を駆け抜ける動画には、300人以上の市民と同野球部員らが参加。この動画は、19年の第90回都市対抗野球大会で東京ドームのモニターに映された。都市対抗野球には、市長をはじめ市職員や市民らが毎回球場に駆けつけるなど、チームと市民の絆は強い。
さらに野球部は24年から高齢者との交流も深めている。認知症の高齢者らと一緒に折り紙や体操をするほか、車椅子を押して外出の手助けもしている。
パナソニック野球部の内田大和マネジャー(24)は「高齢者らからは『食事がいっぱい取れるようになった』『元気が出た』といった声をもらっている。これからも野球を通して地域を盛り上げていきたい」と意気込む。
市生涯学習課スポーツ振興グループの西口浩生課長補佐(57)は「子どもたちにとって選手との交流は野球だけでなく、スポーツをすることへのきっかけとなっている。この輪が他の世代にも広がり、生涯スポーツへの参加や高齢者が元気で魅力的な街へとつなげられれば」と話す。【峰本浩二】
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