プロ野球セ・リーグは4日、東京都内で理事会を開き、2027年シーズンからの指名打者(DH)制導入を決めた。いわゆる「大谷ルール」も適用される。DH制を巡っては、高校野球でも来春から採用されることが1日に発表になったばかり。記者会見したセ・リーグの鈴木清明理事長(広島球団本部長)は「高校野球でもDHを導入することは、私個人としては(今回の判断に至るのに)大きかった」と話した。
野球は、もともとは投手が打席に立つ「9人野球」が基本。DH制は、投手に代わって打撃専門の選手を起用することができる制度で、1973年に米大リーグのア・リーグが始めた。一方のナ・リーグも22年に導入。投打の「二刀流」で活躍する大谷翔平選手(ドジャース)の登場によって、先発投手とDHを兼任する選手が、降板後もDHとして出場できる「大谷ルール」も採用された。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)などの国際大会でもDH制が導入されている。
日本のプロ野球では、パ・リーグが75年に導入。セ・リーグも16年ごろからDH制採用について検討を進めてきた。関係者によると、アマチュア野球界に与える影響を考慮して、当初は一部の球団が難色を示していたという。
しかし、今年になって、東京六大学野球と関西学生野球の両連盟が来春リーグ戦からの導入を決定し、これで全国27の大学野球連盟全てがDH制となることになった。さらに、日本高校野球連盟も来年の公式戦からの導入を決め、甲子園大会では来春の第98回選抜高校野球大会から採用されることになった。アマ球界への影響という懸念材料がなくなり、セ・リーグの今回の決断に至った。
鈴木理事長は「世界の主要プロリーグで最後まで野球発祥時の『9人野球』を継承してきた。しかし、野球の国際的な潮流などに配慮した」と説明した。
かねてDH制を採用してきたパ・リーグが、近年の交流戦や日本シリーズで優勢な状況が続いていることから、セ・リーグでも導入を望む声が多かった。この点について鈴木理事長は「(どちらの制度を採用した方が強くなるかは)主体ではない。ファン、選手、野球界全体にとってどうなのかということが我々の論点だ」と述べ、影響を否定した。
また、ドラフト会議を中心とした選手獲得の調査について、「9人野球」を前提としていることから、来季は猶予期間とした。
日本でトップレベルの「9人野球」が見られるのは来季のセ・リーグが最後となる。会見に同席した三原一晃理事(DeNA専務)は「『9人野球』最後の年を、ファンの方にはしっかり楽しんでほしい」と話した。【岸本悠】
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