
バレーボール男子日本代表の坂梨朋彦コーチ(37)は、今年からチームを率いるロラン・ティリ監督のコーチングに舌を巻く。
「ティリさんは伝え方がうまく、選手たちに迷いがない。キャリアのなせる技です」
新体制で最初の大会となったネーションズリーグ(6~7月)では、新たな戦力の底上げと戦術の浸透が図られた。
現役時代にリベロだった坂梨コーチが、ティリ流の守備システムを徹底解説してくれた。【小林悠太】
ティリ・ジャパンの現在地、チームを支える人々の思いを伝えます
「可能にするためには『狂う』」 ティリ監督の覚悟
「今のバレーはF1」片腕から見たティリ・ジャパン
「成長のブーストになる」
ネーションズリーグには世界トップの18カ国・地域が参加。各チームは週ごとに世界各地を転戦し、試合を重ねた。
2028年のロサンゼルス・オリンピックを見据え、日本は昨夏のパリ五輪のレギュラーだった石川祐希選手(ペルージャ)や高橋藍選手(サントリー)らを大会中盤までは休ませた。昨年まで控えやB代表だった選手で臨んだ。
「思い切って石川たちを呼ばず、いろいろな選手を起用することができました。1試合でも、1点でも、A代表で国際大会を経験したことは、若い彼らの今後の成長のブーストになっていきます」
1次リーグ終盤に石川選手らが戻ってきた。それでも、新戦力の中からミドルブロッカーの佐藤駿一郎選手(ウルフドッグス名古屋)らがベンチ入りの14人に残り、チームは活性化した。
ティリ監督は練習中も工夫をこらしているという。
「(実戦形式の)6対6では、メンバーを固定せず、どんどん入れ替えています。また、よく途中で練習を止めて、自身のバレーの考え方、やり方を伝えています」
ノー・ティップ、ノー・エース
では、ティリ監督は具体的にどのようなことを伝えているのか。
「ディフェンスで最も優先順位が高いのは、フェイントを絶対に落としてはいけないことです」
チームとして掲げているのは、「ノー・ティップ、ノー・エース」。
ティップとはフェイントのことで、エースとはサービスエースのこと。つまり、相手チームにフェイントを決めさせず、サービスエースも許さないことを目指している。
言葉では簡単だが、実行するのは難しい。
ティリ監督は特に重視するフェイントへの対応のため、割り切ったレシーブの位…
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