
名古屋市中区にある剣道の道場「洗心道場」は、これまで何度も日本一に輝いた少年剣道の名門だ。道場長の内田信之さん(63)が心がけているのは人間形成。「まずは心。剣道の技術は後からでもいい」。日々道場で竹刀を振る子どもたちを見守る。
道場があるのは真宗大谷派名古屋別院(東別院)の敷地内。戦国時代、ここにあったのは織田信長の父信秀の居城・古渡城。信長が元服した由緒ある地だ。

「こんにちは」「よろしくお願いします」。子どもたちのハキハキとしたあいさつが道場内にひびく。「人に会ったら、自分からちゃんとあいさつができる。相手の目を見て話を聞く――。そういう『形』を大切にしています」と内田さん。東海地方で盛んなうつわ作りになぞらえて、「子どものうちにまずはうつわの形を作り、大人になる中で、そこに心や精神的なものを入れていく」と、そのこだわりを語る。
洗心道場の創設は1968年。東京・日本武道館で毎夏開催される「全国道場少年剣道大会」や、剣道界で「水戸大会」として親しまれる毎年3月の「全国選抜少年剣道錬成大会」でも優勝を重ねてきた。

道場に集う小中学生も目標は高い。新井清隆さん(小6)は目標を「全国大会での優勝」ときっぱり。「日本一の剣士」を目指す堀響治朗さん(同)は勝利のために毎朝のランニングや素振りを欠かさないという。塚本裕馬さん(同)も「苦しいときは日本一という目標のことを考える」といい、江口大晴さん(中2)は「どうすればライバルに勝てるかを考えて稽古(けいこ)している」と話す。
8月3日に東京都葛飾区の奥戸総合スポーツセンターで開催される「第2回大江戸旗・葛飾区長杯全国選抜少年剣道大会」(葛飾区剣道連盟主催、毎日新聞社など後援、富山常備薬特別協賛)には、昨年に続き2年連続で出場する。大将を務める深町惇成さん(中2)は「一試合一試合を大切に、『攻めて勝つ』を忘れず精いっぱい頑張る」。静かに頂点を見据えた。【曽根田和久】
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