
東京電力福島第1原発の事故で溶け落ちた、約880トンにも上る燃料デブリ。これまでに取り出せた量はわずか0・9グラムに過ぎない。さらに今回、本格的な取り出しの工程が大幅に遅れることが明らかになった。
もはや目標の「2051年までの廃炉完了」は誰が見ても実現が難しくなっているが、東電は「旗は降ろさない」という。国と東電はなぜ「絵に描いた餅」とも言える計画に固執するのか。
完了に「100~300年」の試算も
「国の示したロードマップを守るのが責務だ。どうやったら達成できるか考えたい」。東電は7月29日に開いた記者会見で、本格的なデブリ回収の開始時期について、当初予定の30年代初頭から37年度以降に遅らせると明らかにした。その場で小野明・福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者は、41~51年に廃炉を完了するという目標を変更しない姿勢を強調した。
目標の完了時期は、福島事故の発生から30~40年後に当たる。11年12月、政府と東電が作成した廃炉工程表(ロードマップ)で初めて示された。
根拠となったのは、国の原子力委員会が設けた有識者会議の提言だ。1979年に事故を起こした米国スリーマイル島原発では、燃料デブリの取り出し完了が約11年後だった。
さらに通常の原子炉解体に15年かかることを参考に、「廃炉が全て終了するまでは30年以上かかると推定される」と結論づけた。これが工程表の目標に反映され、過去5回の改定でも堅持されている。
だが、ほとんどの専門家は、51年までの廃炉完了は困難と見る。
日本原子力学会の廃炉検討委員会は20年に公表した報告書で、廃炉が完了し跡地を利用できるよう…
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