2024年元日の能登半島地震と同年9月の豪雨で深刻な被害を受け、人口流出が問題化している石川県珠洲市で、人口が1万人を割り込んだことが県と市の集計で分かった。9月1日に県が正式発表する。市の人口が1万人を割るのは、北海道以外では初めて。地域振興のための「2地域居住」の推進など、対策づくりが一層求められる。
人口統計には2種類あり、各市町村は住民基本台帳に基づく人口を発表している。だが、進学や就職などで親元を離れた若者や、施設に入所した高齢者が住民票を残しているケースも多い。
地方の実態を示す数値としては、県が毎月初めに発表する「推計人口」が主に使われる。居住実態を調べる5年ごとの国勢調査を基にし、毎月、市町村に提出される「出生」「死亡」「転入」「転出」の四つの届け出から算出する。
珠洲市域は、戦後間もない1950年ごろには3万8000人程度の人口を抱えていた。54年の市制施行以降徐々に減り続けた。
県統計情報室の集計では、24年元日時点の珠洲市人口は1万1721人。地震後に転出した被災者も多く、今月発表した7月1日現在の推計人口は、1万35人だった。
市の集計では7月の月間の出生は2人、死亡は24人、転入12人で転出85人。4届の集計で1カ月減少数が100人近くに達した。
総務省などによると、市制施行は現在、人口5万人以上で、中心市街地に全戸数の6割以上が集まっていることなどが要件。町村との違いは、福祉事務所設置の義務を負うかなどで、人口減少しても合併以外で「市」でなくなることはない。
1万人未満の市は、これまで北海道に集中。昭和30年代まで産炭地域として栄えた赤平、三笠、夕張、歌志内の4市で、珠洲市以外では高知県室戸市が7月1日現在推計人口が1万13人と危機が迫っていた。
北海道4市は、子育て支援などそれぞれ特色有る制度で人口維持を図る。石川県は、官民協力して「市町とつながる『関係人口』の増大」「2地域居住の推進」を図る方針。珠洲市も震災後に改訂した「人口ビジョン」で、「年間60人の移住増加」を目標に掲げ、移住・定住の推進や関係人口の拡大を図る「地域おこし協力隊員・まちづくり支援員」を募集している。応募は企画財政課(0768・82・7726)へ。【竹中拓実】
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