高校野球・夏の甲子園1回戦(6日)
○沖縄尚学1―0金足農(秋田)●
太もも周りは71センチ。沖縄尚学の2年生左腕、末吉良丞(りょうすけ)は、がっちりとした体格から投じる最速150キロの直球を持ち味とする。だが、夏の甲子園初戦で光ったのは、春のセンバツ後に改良を加えたスライダーだった。
一回、金足農の1番・武藤一斗の直球狙いを察知し、1ストライク後にスライダーを連投して空振り三振を奪った。次打者も空振り三振に仕留めると、大記録へのほのかな期待が胸に広がった。
「狙えるかもな」
脳裏によぎったのは、2012年の1回戦・今治西(愛媛)戦で22奪三振の大会記録を樹立した桐光学園(神奈川)の松井裕樹(現パドレス)の姿。その代名詞のスライダーこそが、センバツ後に追い求めてきたウイニングショットだった。
センバツ2回戦では、横浜(神奈川)から変化球で空振りを奪えず、7回5失点。敗戦を教訓に、直球と見分けがつきにくいようにスライダーの球速を上げ、松井のように「右バッターの内側に斜めに消えていくスピンの利いたスライダー」に改良した。
この日は中盤まで狙い通りにスライダーで空振りの山を築いたことで、直球も生きた。八回2死三塁では、追い込んでから高めの直球を9番・芹田礼に振らせ、最大のピンチを切り抜けた。芹田は「甘く入ってきたスライダーを狙っていたら手が出てしまった」と脱帽した。
新たな武器で14奪三振を積み上げ、完封でチームが目標とする「春夏通算30勝」まであと二つとした。それでも松井の大記録には遠く、「甘くはなかった。高めに抜けることも多かったので、今日のスライダーは70点ぐらい」。末恐ろしさを感じさせる115球だった。【皆川真仁】
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