駐日パレスチナ常駐総代表部のワリード・シアム大使が6日、広島市中区で市民有志が開いた集会に参加した。2023年10月に始まったイスラエルのパレスチナ自治区ガザ地区への大規模侵攻によって既に6万人以上の命が奪われており、「広島から大きく声を上げ続けてほしい。なぜなら、世界の向こう側では人間がジェノサイド(大量虐殺)の対象にされているのだから」と訴えた。
シアム大使は、広島や被爆者の存在が「恐怖に直面しても記憶は抵抗となり、生存者は証言となることを私たちに思い起こさせる」と強調した。また、1948年のイスラエル建国によって70万人以上が難民となったことや、67年の第3次中東戦争でイスラエルによってパレスチナのガザ地区、ヨルダン川西岸地区、東エルサレムを占領されたことなど、パレスチナ人の約80年の惨禍を説明し、「私たちは想像を絶する苦しみに耐えてきた。家を追われ、屈辱を受け、基本的な権利を剥奪されてきた。世界はずっと黙って見ているだけだ」と語った。
その上で、パレスチナの国家承認▽占領地などで利益を得ている企業からの投資引き揚げ▽政府に対するイスラエルとの軍事・財政関係の停止――などを求め、「人の命が使い捨てにできるとみなされた時には、沈黙を拒否してください」と訴えた。
80年前の米国による広島への原爆投下については、「決して起きてはならない戦争犯罪で、何の説明責任も果たされていない」と指摘。「私たちは戦争犯罪を犯す国々を指摘すべきだ。イスラエルは他の国々と共謀し、パレスチナのジェノサイド、民族浄化、戦争犯罪を犯している」と述べた。
集会は、ガザ侵攻や虐殺への抗議活動を続ける市民グループ「広島パレスチナともしび連帯共同体」が主催。参加した市民団体「核政策を知りたい広島若者有権者の会(カクワカ広島)」の田中美穂共同代表は「パレスチナの解放と核廃絶は地続き。見えなくされてきたものを明らかにし、それらを支える戦争、占領、不正義の構造を解体する闘いだ」と話した。
シアム大使は6日にあった広島市の平和記念式典に出席。日本政府が国家として承認していないことを理由に、広島市は昨年までパレスチナを式典に招待していなかったが、今年から案内する形に変更し、パレスチナは初参列した。【矢追健介】
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