第107回全国高校野球選手権の地方大会は27日、各地で決勝が行われ、サヨナラ勝ち、延長タイブレーク、逆転劇など好勝負が相次いだ。
春夏連覇を目指す横浜(神奈川)や昨夏に全国優勝を果たした京都国際、昨年の選抜大会を制した健大高崎(群馬)などが甲子園出場を決めた。一方で、春夏の甲子園大会で計9回の優勝を数える大阪桐蔭は東大阪大柏原に惜敗。選抜最多5回優勝の東邦(愛知)も豊橋中央に敗れた。春夏3回優勝の作新学院(栃木)も青藍泰斗(せいらんたいと)に屈した。「甲子園優勝経験校」で明暗が分かれる結果となった。
横浜は東海大相模に三回に3点を先取される苦しい展開を強打でひっくり返し、「秋春夏連覇」への挑戦権を手にした。主将の阿部葉太選手(3年)は「夏(の神奈川大会)は過去2大会は準優勝。この代でなんとしても勝ちたいとやってきたので、勝ちきれてうれしい。甲子園では泥臭く横浜らしい野球をしたい」と喜んだ。
三回に先発右腕・織田翔希投手(2年)が3ランを浴びたが、すぐに打線が援護した。直後の四回、4番の奥村頼人選手(3年)の2試合連続となる2ランなどで4点を挙げて逆転。五回にも3点を加えるなどリードを広げ、計11安打、11得点の猛攻で昨夏に敗れ、春夏計5回優勝のライバルを11―3で降した。
準々決勝から3試合連続の逆転勝利で激戦区の神奈川の頂点に立ち、村田浩明監督は「プレッシャーを乗り越えた先に選手たちは躍動してくれた。どのチームも横浜を倒すという声が耳に入った。それを受けて立つのではなく、その上を行こうと厳しい展開を戦ってきた。神奈川の全ての学校の思いを持って甲子園も一戦必勝で戦う」と意気込んだ。
京都国際と健大高崎はともにサヨナラ勝ち。京都国際は鳥羽に4―3で勝利し、健大高崎は延長十一回タイブレークの末、前橋育英を4―3で振り切った。
「京都国際史上、メンタリティーが一番弱い学年が、日本で一番重い十字架みたいなものを背負わされて。本当に苦しかったと思う。一戦一戦、力をつけて、たくましくなってくれた」
2年連続4回目の夏切符をつかんだ京都国際の小牧憲継監督は、こんな言葉で「前回王者」の重圧と戦ってきた選手たちをたたえた。
10年ぶりの甲子園を狙う鳥羽との京都大会決勝。エース左腕の西村一毅投手(3年)が一回に2点を先行され、攻撃では再三走者を出しながらも押し切れない展開だった。だが、選手たちは積極性を発揮し、劣勢をはねのけてみせた。
2点を追う八回に1番・長谷川颯選手(3年)の適時打で同点。九回に猪股琉冴選手(3年)が右翼にサヨナラ打を放った。
長谷川選手と猪股選手の適時打はともに初球を捉えたもの。現チームは元々打力が高かったが、強い意気込みが空回りしてか、甘い球にバットが出なかったという。「腹をくくって初球から勝負にいく。その踏ん切りが付いた」と小牧監督は成長を喜んだ。
一方、大阪桐蔭は最大4点差を追いつく粘りを見せたが、延長タイブレークにもつれこむ激戦の末、5―6で敗れた。西谷浩一監督は「子どもたちが接戦に持ち込んでくれたのに、監督がうまくできなかった。それに尽きると思う」と悔やんだ。
先発を託した右腕・森陽樹投手(3年)が二回に2点を先取されると、四回にはエースで主将の右腕・中野大虎投手(3年)に継投した。
しかし、中野投手も六回に3連打などで2点を失った。攻撃では4点を追う七回に3四死球に3本の内野安打も絡めて追いついたが、タイブレークに入った十回に再び2点を勝ち越され、力尽きた。
中野投手、森投手は高校日本代表候補に選出され、下級生の頃から注目を集めてきた。その「二枚看板」が11安打を許し、本領を発揮できなかった。
現チームは春夏ともに甲子園出場がかなわなかった。大黒柱の中野投手は「最後、自分が勝ちに持っていけなかった。(相手打線に)勢いに乗られて、連打を浴びてしまった」と絞り出した。西谷監督は「キャプテンの中野を中心に良いチームだった。良いチームを甲子園に導いてやれない監督の力不足だと思う」と語った。
東大阪大柏原は14年ぶり2回目の夏の甲子園出場。2016年以降、大阪桐蔭と履正社が夏の大阪代表を占めてきた(南北に分かれた18年の記念大会を除く)が、復活を印象付けた。
東邦は2点を追う九回に同点とし、延長タイブレークに持ち込んだが、春夏初出場を目指した豊橋中央に5―6で競り負けた。作新学院は終盤に追いつかれ、延長タイブレークの末に前身の葛生時代に初出場して以来、35年ぶり2回目の出場を狙った青藍泰斗に3―4で逆転負けした。
高校野球は選手が毎年入れ替わり、強豪や名門といわれるチームでも勝ち続けることは難しい。群雄割拠を象徴するような一日となった。【石川裕士、長宗拓弥、高橋広之】
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